遺産分割協議書作成

相続が発生し、遺言書が無い場合には、遺産をどのように分けるかを話し合う『遺産分割協議』を行う必要があります。
そして、この協議で決まった内容を『遺産分割協議書』として書面に残し、相続手続きに活用していきます。

目次
  1. 遺産分割協議
  2. 遺産分割協議書
  3. 遺産分割協議書作成は【相続・生前対策専門】行政書士香川法務事務所にお任せ下さい

遺産分割協議

遺産分割協議とは?

亡くなった被相続人の遺産は相続が開始した時から相続人全員の共有となる、と民法上で定められています。
そして、もし遺言書がある場合にはその遺言書の内容に従って共有状態の遺産を分割していくことになるのですが、もし遺言書が無い場合にはその遺産の分け方を相続人全員で話し合う必要があり、その話し合いのことを遺産分割協議といいます。

遺産分割協議の期限

遺産分割協議自体には、特に法律上の期限はありません。

ただし、相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内に相続税申告を行わなければならない、という期限があるので、それまでに遺産分割協議を完了させた方が良いでしょう。
もし10ヵ月以内に遺産分割協議がまとまらない場合には、暫定的に法定相続分による相続税申告を行い、後に修正申告や更正の請求によって相続税の精算を行うことになります。

さらに、『特別受益(被相続人から生前贈与などで受けた特別な利益)』と『寄与分(生前に被相続人に対して行った特別な貢献)』を遺産分割協議などにおいて主張することが出来る期限が、相続開始から10年以内と定められている点にも注意が必要です。

遺産分割協議を行わない場合のデメリット

一部の相続人が遺産を使ってしまう可能性がある

遺産の管理を一部の相続人に任せていると、その相続人が遺産を使い込んでトラブルになる可能性があります。

遺産が共有状態のままだと活用が困難になる

共有状態の不動産などは、売却や賃貸に関して共有者間で意見が対立してしまう可能性があるので活用が困難となります。

相続税に関する特例を受けられなくなる可能性がある

相続税に関しての『小規模宅地等の特例』や『配偶者の税額軽減』などの適用を受けるためには、原則として期限内に相続税申告を行う必要があります。
相続税申告の期限までに遺産分割協議が完了しない場合に、これらの特例や税額軽減の適用を受けるためには、申告書に『申告後3年以内の分割見込書』を添付し、申告期限から3年以内に遺産分割協議を完了させなくてはなりません。

遺産分割協議に参加すべき相続人

遺産分割協議には、相続人全員が必ず参加しなくてはなりません。
そして、参加する相続人は以下のようなルールで決まります。

法定相続人の範囲と順位

被相続人の配偶者と血族が法定相続人になりますが、血族に関しては『被相続人に近い人』が先順位となり、先順位者がいる場合には後順位者には相続権は発生しません。

配偶者

配偶者は常に相続人となります。

ただし、ここでいう配偶者は『法律婚をしている配偶者』に限られ、内縁の妻もしくは夫や離婚した元配偶者などには相続権はありません。

第一順位(直系卑属)

第一順位は直系卑属です。

直系卑属とは、自分より後ろの世代の者を指し、被相続人に子がいる場合にはその子が相続人となります。
ただし、その子が被相続人よりも先に亡くなっていて、その子の子、つまり被相続人の孫がいる場合にはその孫に相続権が移ります(代襲相続)。
さらに孫も亡くなっていて、その孫の子、つまりひ孫がいる場合はひ孫に移ります(再代襲)。

また、養子がいる場合は実子と同様の扱いとなり、第一順位の法定相続人となります(代襲相続も適用されます)。
ただし、ここでいう養子とは養子縁組をしている場合に限られ、例えば配偶者の連れ子であっても養子縁組の届け出をしていなければ、その子は法定相続人にはなりません。

さらに、民法上相続において胎児は『すでに生まれたもの』として取り扱われることになっています。
つまり、被相続人と胎児の関係(子や孫、兄弟姉妹など)においては、当該胎児は第一順位あるいは後述する第三順位の法定相続人になります(ただし、胎児が相続人となるのは無事に生まれた場合で、死産であった場合には適用されません)。

第二順位(直系尊属)

第一順位者がいない場合には、第二順位者の直系尊属に相続権が発生します。

直系尊属とは、自分より前の世代の者を指し、被相続人の両親とも存命であれば両親二人が相続人となり、片方の親のみ存命であればその一人が相続人となります(両親が離婚していても同様です)。
そして、両親共既に亡くなっている場合、祖父母が存命なら祖父母に相続権が移り、祖父母も亡くなっていれば曾祖父母に移る、というように、上の世代で存命の者がいればその者に相続権が移ります。

第三順位(兄弟姉妹)

第一順位者、第二順位者が共にいない場合には、第三順位者の兄弟姉妹に相続権が発生します。

ここでいう兄弟姉妹には異母兄弟・異父兄弟も含まれ、兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は、甥姪に相続権が移ります。
ただし、第三順位では代襲相続は一代のみであり、甥姪が亡くなっていてもそれより下の世代へ再代襲することはありません。

連絡が取れない相続人がいる場合

連絡が取れない相続人がいる場合、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立て、さらに家庭裁判所の許可を得て、その相続人に代わって遺産分割協議に参加させなくてはなりません。

もしも連絡が取れない相続人を無視して遺産分割協議を行った場合、その協議は無効となるため、再度遺産分割協議をやり直さなくてはなりません。

認知症の相続人がいる場合

認知症によって判断能力が低下した相続人がいる場合、家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てる必要があります。
判断能力が十分でない相続人による遺産分割への同意は、無効となったり取り消されたりする可能性があるからです。

家庭裁判所によって選任された成年後見人は、認知症などで判断能力が十分ではない人の代わりに法定権利を担う役割を得て、被後見人となった相続人に代わって遺産分割協議に参加することが出来ます。

遺産分割協議を行う際のポイント

協議を行う場所

遺産分割協議を行う場所に関して、法律上の定めはありません。
相続人全員が参加する、ということさえ満たせれば、以下のような場所で行うことが出来ます。

  • 被相続人の自宅
    故人の思い出を振り返りながら話し合うことが出来、相続財産の現況も確認しやすい。
  • 相続人の自宅
    過去に親族で良く集まっていた場所であれば、相続人全員が集まりやすい。
  • 士業事務所
    第三者である専門家(弁護士・司法書士・税理士・行政書士など)が同席することで冷静に話し合える(※相続人同士でもめる可能性が高い時は弁護士のみ対応可能)。
  • レンタル会議室、ファミレス、カフェ
    中立的な場所で話し合うことが出来るが、プライバシーを確保出来るか要確認。
  • Zoom等オンライン
    遠方の相続人がいる場合には便利。

遺産分割の方法

遺産分割の方法には、以下の4種類があります。

  • 現物分割
    遺産をそのままの状態で分割する方法。
    現金や預貯金を分ける場合や、土地を分筆してから分ける場合などが該当する。
  • 代償分割
    遺産を一部の相続人のみが相続し、その相続人が他の相続人に対して代償金を支払う方法。
    不動産などで用いられることが多い。
  • 換価分割
    遺産を売却し、その代金を相続人間で分ける方法。
    不動産などで用いられることが多い。
  • 共有分割
    遺産を複数の相続人の共有とする方法。
    不動産などで用いられることが多いが、後々トラブルに発展する可能性もあるため慎重に検討する必要がある。

遺産分割協議がまとまらなかった場合

遺産分割協議がまとまらなかった場合は、家庭裁判所の調停や審判によって遺産分割の方法を決めることになります。

遺産分割調停

遺産分割調停とは、調停委員の仲介の下で相続人全員が遺産の分け方を話し合う手続きのことを指し、第三者である調停委員が間に入ることで、相続人同士が直接協議するよりも冷静な話し合いを行えることが期待出来ます。

そして、裁判官が提示する調停案に対して相続人全員が同意すれば調停は成立となり、調停調書が作成され、調停調書に従った遺産分割が行われます。

遺産分割審判

遺産分割調停でも話し合いがまとまらず不成立となった場合、家庭裁判所が審判を下します。

この際、家庭裁判所は法定相続分を基準としつつ、当事者から提出された主張や資料を総合的に考慮して遺産分割の方法を決定します。
そして各相続人に審判書が送達され、その内容に従った遺産分割が行われます。

遺産分割のやり直し

遺産分割協議が無効となった場合

遺産分割協議に参加しなかった相続人がいる場合、その遺産分割は無効となります。
また、詐欺や強迫を受けて遺産分割協議に同意した相続人は、その同意の意思表示を取り消すことが出来、この場合も遺産分割は無効となります。

そして、遺産分割が無効となった場合は、あらためて遺産分割をやり直さなければなりません。

遺産分割のやり直しに相続人全員の合意があった場合

遺産分割により相続された財産は、権利を得た相続人が自由に処分出来ます。
したがって、相続人全員の合意があれば、分けた遺産を再び持ち寄り遺産分割をやり直すことも出来ます。
ただし、一人でも反対する相続人がいれば、遺産分割が無効である場合を除いてやり直しは認められません。

(※遺産分割のやり直しによって財産を移動する場合には、相続ではなく贈与による財産の取得とみなされ、贈与税が課されることになります。そして、すでに相続税を納付している場合では、納付済みの相続税とは別に、さらに贈与税が課されることになります。贈与税は相続税よりも基本的には税率が高く設定されている上に、相続税と贈与税の二重課税が生じる可能性もあるので注意が必要です。)

遺産分割後に遺言書が見つかった場合

遺産分割後に遺言書が見つかった場合、まずは相続人と受遺者の全員に対して、遺言書が見つかった旨を伝えなければなりません。

そして、もし相続人と受遺者の全員が、既に行った遺産分割の内容に合意している場合には、遺言書の内容に従う必要はないので、遺産を改めて分割し直す必要はありません。

ただし、相続人と受遺者のうち1人でも遺言書に従った遺産分割を主張すれば、遺言書に従って遺産を分けなくてはなりません。

遺産分割後に新たな財産や負債が見つかった場合

遺産分割後に新たな財産や債務が判明した場合、遺産分割協議書に取り扱いが明記されていればその内容に従います。

もし、特に取り決めがない場合には、あらためて遺産分割を行う必要があります。
その際には新たに判明した部分だけ分け直すことも、すでに分けた遺産も含めて分け直すことも可能です。

(※すでに分けた遺産を相続人間で移動させる場合、贈与税の課税対象となるので注意が必要です。)

遺産分割協議書

遺産分割協議書とは?

上記で説明した『遺産分割協議』で合意した結果をまとめた書類のことを『遺産分割協議書』といい、誰がどの財産を相続するか、を詳細に記載する必要があります。

ちなみに、法律上では遺産分割協議は口頭だけでも成立するため、遺産分割協議書は必ず作成しなければならない書面ではありません。
しかし、口約束だけだと後々相続人間で『言った、言ってない』などのもめごとが起きてしまう可能性もあるので、話し合いの証拠として遺産分割協議書は必ず作成した方が良いでしょう。

また遺言書がない場合、遺産分割協議書がないと不動産や車、預貯金などの名義変更の手続きが滞ってしまいます。
相続財産を亡くなった方の名義のまま放置すると、将来、大きなトラブルにつながる恐れがあるので、遺言書がない相続の場合には必ず作成する必要があります。

遺産分割協議書作成のポイント

遺産分割協議書の書き方に法的な決まりはありません。
しかし、もし内容に不備があった場合には、その協議書は無効とされ相続手続きを進めることが出来なくなってしまいますので、書き方のポイントを確認しておきましょう。

パソコンでも手書きでもOK

先述の通り遺産分割協議書に決まった書式はありませんので、パソコンでも手書きでも問題なく、利用する用紙やペンなども自由です。
ただ、パソコンを使えるのであれば、A4サイズの紙を使ってパソコンで作成するのが無難です。

作成の日付を入れる

遺産分割協議書を作成した日付を記入します。

被相続人の情報を記載する

被相続人の名前、亡くなった日、最後の住所、本籍地などを記載します。

相続人の情報を記載する

相続人の情報を記載する際には『妻、○○□□』、『長男、○○△△』のように、人物を特定出来るように続柄や氏名も記載します。

誰がどの財産を相続するのか記載する

『相続人の誰が』『相続財産の内のどの財産を取得するか』を記載します。
その際に、あいまいな表記ではなく、第三者にも伝わるように明確に遺産を特定出来るよう明記することが非常に重要となります。

預貯金

銀行名、支店名、口座種別、口座番号、名義人の名前を明記し特定します。

不動産

「自宅」のようなあいまいな表記だと、相続登記の手続きを行う際に法務局が受理してくれないので、土地であれば、所在地、地番と土地の種類、地積、建物であれば、所在地、家屋番号、建物の構造、面積を明記し特定します。
基本的には『不動産全部事項証明書』の『表題部』をそのまま書き写せば問題ありません。

有価証券

株式などの有価証券については、証券会社名、発行会社名、株式数を明記することで特定します。

債務や負債

債権者、契約内容、債務残高などを明記します。

遺産分割協議書作成後に新たに見つかった財産や負債の取り扱いを明記する

遺産分割協議を行う前に相続財産調査は完了していることが前提ですが、それでも後から新たに財産や負債が見つかることもあります。

そういった状況に備え、新たに見つかった遺産の取り扱いを明記しておく必要があります。
例えば「後から見つかった財産は長男○○△△が相続する」というように記載しておくことで、後から遺産が見つかった際に改めて遺産分割協議をやり直す必要が無くなります。

相続人全員が実印で署名捺印する

遺産分割協議書が完成したら、相続人全員で内容を確認し『実印』で署名捺印します。
この際に一人でも署名押印が欠けると、その遺産分割協議書は無効になってしまうので注意が必要です。

複数ページになった場合には契印する

遺産分割協議書が複数ページになった場合には、ページの間に契印をします。
法的には契印する義務はありませんが、契印することでページ差し替えなどの改ざんを予防することが出来ます。

相続人全員分用意する

完成した遺産分割協議書を相続人全員分用意し、各自が1通ずつ所持します。

遺産分割協議書作成は【相続・生前対策専門】行政書士香川法務事務所にお任せ下さい

遺産分割協議書作成は相続人本人が行うことも可能ですが、万が一内容に不備があった場合にはその協議書は相続手続きに使用することが出来ず、作り直さなければなりません。
さらに、あらためて相続人全員が実印で署名捺印を行う必要もあり、相続人がそれぞれ遠方にいる場合や、相続人間の関係性が良好でない場合には、大変な手間がかかります。

遺産分割協議書作成にご不安がありましたら、ぜひお気軽に【相続・生前対策専門】行政書士香川法務事務所にお問い合わせください。