死後事務手続とは?必要な手続を時系列に沿って解説
『死後事務手続』とは、被相続人の死亡後に必要となる各種の手続のことをいいますが、『相続人調査』や『遺産分割協議』、『相続税申告』などといった、いわゆる『相続手続』よりも前に対応すべき手続のことを指すのが一般的です。
亡くなった直後から初七日までにすべき手続
死亡診断書の受け取り
親や家族が亡くなったら、すぐに病院の医師から『死亡診断書』を受け取ります。
もし、事故死や突然死などの場合には警察に連絡する必要があり、その場合には検死の後、『死体検案書』を作成してもらって受け取ります。
なお、『死亡診断書』の発行にかかる費用は3千円~1万円程度、『死体検案書』の発行にかかる費用は3万円から10万円程度、となっています。
通常、死亡診断書は死亡当日か翌日に交付してもらえますが、以後の手続で必要になることも多いので10枚程度コピーを取っておくと便利です。
死亡届の提出・火葬許可証の受け取り
死亡診断書または死体検案書の交付を受けたら『死亡届』に必要事項を記入し、『火葬許可申請書』と併せて役所に提出します。
そして、これらの書類と引き換えに『火葬許可証』が交付されます。
【死亡届の提出期限】
死亡を知った日から7日以内(遅れると5万円以下の過料を科される可能性あり)
【提出先】
次のいずれかの市区町村役場
・亡くなった人の死亡地
・亡くなった人の本籍地
・届出人の所在地
葬儀社への連絡
葬儀社へ連絡し葬儀の打ち合わせを行います。
なお、先述した死亡届や火葬許可証の提出に関しても葬儀社が代行してくれるのが一般的なので、まとめて依頼すると良いでしょう。
葬儀と初七日
火葬許可証を葬儀社に渡し、葬儀(通夜、葬儀式、告別式、火葬まで)を行います。
なお、本来『初七日』は亡くなってから7日目の法要のことを指しますが、葬儀と同日に済ませることも可能です(繰り上げ法要)。
なお、葬儀費用の負担者に関して法律上の取り決めはありませんが、通常は喪主が負担するので、香典は喪主が預かり、それを葬儀代にあてるのが一般的です。

葬儀後に行う行政手続
年金受給停止(10日または14日以内)
亡くなった人が年金を受け取っていた場合、年金事務所または年金相談センターに連絡をして年金の受給停止の手続を行います。
なお、提出期限は、厚生年金の場合死亡後10日以内、国民年金の場合死亡後14日以内、となっています。
【届出先】
年金事務所、年金相談センター
【必要書類】
・年金受給権者死亡届(報告書)
・年金証書
・死亡の事実を明らかにできる書類(死亡診断書のコピーや戸籍抄本など)
【提出期限】
・厚生年金の場合、死亡後10日以内
・国民年金の場合、死亡後14日以内
なお、マイナンバーが日本年金機構に収録済みである場合には、役所に死亡届を提出することで年金事務所に情報が共有されるため上記の手続は不要となります(後述する未支給年金の届け出は別途必要)。
健康保険の資格喪失届(5日または14日以内)
亡くなった人の健康保険証を返却します。
【健康保険の場合】
提出先:年金事務所(勤務先が提出するのが一般的)
期限 :死亡後5日以内
【国民健康保険や後期高齢者医療制度の場合】
提出先 :市区町村役場
期限 :死亡後14日以内
介護保険資格喪失届(14日以内)
亡くなった人が65歳以上、または40歳以上65歳未満で要介護・要支援認定を受けていた場合、介護保険の資格喪失の手続が必要となります。
【届出先】
市区町村役場
【必要書類】
・介護保険証
・介護保険資格喪失届
【期限】
死亡後14日以内
住民票の世帯主変更届(14日以内)
亡くなった人が世帯主であり、同居人が新たな世帯主になる場合には市区町村役場に住民票の『世帯主変更届』を提出する必要があります。
なお、亡くなった夫と妻の2人で1世帯を形成していた場合や、亡くなった親1人と15歳未満の子のみで世帯を形成していた場合など、次に世帯主となる人物が明白、あるいは、世帯主にふさわしい人物がいない、などの場合には上記手続は不要です。
【届出先】
市区町村役場
【期限】
死亡後14日以内(遅れると5万円以下の過料を科される可能性あり)
雇用保険受給資格者証の返還(1ヵ月以内)
亡くなった人が雇用保険を受給していた場合、返還が必要です。
【提出先】
雇用保険を受給していたハローワーク
【期限】
死亡後1ヵ月以内
国民年金の死亡一時金請求(2年以内)
亡くなった人が、国民年金の第 1号被保険者として国民年金保険料を一定期間以上納め、老齢基礎年金、障害基礎年金のいずれも受給しないまま死亡した場合、遺族に『死亡一時金』が支給されます。
金額は年金への加入期間によって異なりますが(12万~32万円)、遺族基礎年金を受け取る場合は、死亡一時金は支給されません。
【請求先】
市区町村役場、年金事務所、年金センター
【必要書類】
・亡くなった人の年金番号を明らかにできる書類
・亡くなった人と申請者の関係がわかる戸籍謄本、または法定相続情報一覧図の写し
・亡くなった人の住民票除票
・世帯全員の住民票
・受取先金融機関の通帳またはキャッシュカードなど
【期限】
死亡日の翌日から2年以内
埋葬料請求(2年以内)
亡くなった人が健康保険の被保険者だった場合、『埋葬料』を請求できます(5万円)。
【請求先】
加入している健康保険組合または協会けんぽ
【必要書類】
・健康保険埋葬料請求書
・健康保険証
・死亡診断書(コピー可)
・埋葬費用の領収証など
【期限】
・死亡日の翌日から2年以内
葬祭費請求(2年以内)
亡くなった人が国民健康保険か後期高齢者医療保険に加入していた場合、遺族は市区町村に対して『葬祭費』の請求ができます(金額は1~7万円で、家族の状況や市区町村により異なる)。
【請求先】
亡くなった人が住んでいた市区町村
【必要書類】
・亡くなった人の健康保険証
・申請者の本人確認書類、印鑑
・葬儀費用の領収証など
【期限】
葬儀から2年以内
高額療養費の還付申請(2年以内)
亡くなった人が生前に入院などをしていて、家族などが高額な治療費の負担をした場合には『高額療養費』の還付請求ができます。
【請求先】
加入している健康保険組合、協会けんぽ、市区町村
【必要書類】
医療費の明細書
【申請期限】
医療費支払いから2年以内
遺族年金の請求(5年以内)
配偶者が亡くなった場合『遺族年金』を受給できるケースがあり、その場合、年金事務所に遺族年金の申請が必要です。
なお、遺族年金には『遺族基礎年金』と『遺族厚生年金』があり、家族構成や収入などによって支給の有無が決まります。
【請求先】
年金事務所
【必要書類】
・年金手帳(亡くなった人および請求者のもの)
・戸籍謄本
・世帯全員分の住民票の写し
・亡くなった人の住民票の除票
・請求者の収入を確認できる書類
・子どもの収入を確認できる書類
・死亡診断書のコピー
・振込先の通帳
・印鑑
【請求期限】
死亡後5年以内
亡くなった人の未支給年金の請求(5年以内)
年金は毎月支払われるわけではなく、2ヵ月分がまとめて支払われます。
そのため、亡くなるタイミングによっては、本来受け取るはずだった年金が未支給になることがあり、遺族はこの『未支給年金』を請求できます。
【請求先】
年金事務所
【必要書類】
未支給年金請求書
【申請期限】
死亡後5年以内
その他の手続
クレジットカードの利用停止
亡くなった人がクレジットカードを利用していた場合、クレジットカード会社に連絡し利用停止手続を行います。
運転免許証の返納
亡くなった人が免許証を持っていた場合、速やかに返納します。
【提出先】
自動車安全運転センターまたは警察署
【必要書類】
・免許証
・死亡診断書の写し
・亡くなった人の除籍謄本
・提出者の身分証明書と印鑑
パスポート失効手続
亡くなった人がパスポートを持っていた場合、速やかに失効手続を行います。
【申請先】
パスポートセンター
【必要書類】
・パスポート
・亡くなった人の除籍謄本
・死亡診断書の写し
・火葬許可証の写し

団体信用生命保険の請求
亡くなった人が団信(住宅ローンを組む際に加入する生命保険。加入者本人が死亡したときに保険金によってローン残債を全額返済できる。)に加入していた場合、金融機関に連絡し保険金の請求をします。
生命保険金の受取り(3年以内)
亡くなった人が生命保険の被保険者になっていた場合、生命保険会社に連絡し保険金の請求をします。
【請求先】
加入している生命保険会社
【必要書類】
・保険証書
・亡くなった人の除籍謄本
・受取人の身分証明書
・印鑑
(※保険会社によりその他書類の提出を求められることもあります)
【期限】
死亡後3年以内
公共料金の名義変更または契約停止
亡くなった人の名義で水道光熱費などの公共料金の契約をしていた場合、それぞれの契約会社に連絡し名義変更または契約停止の手続を行います。
携帯電話の解約
亡くなった人が携帯電話を使用していた場合、契約先に連絡し解約手続を行います。
必要書類に関しては、各契約先にお問い合わせください。
定額サービスなどの契約停止
亡くなった人が動画・音楽配信やその他定額サービスを契約していた場合、各契約先に連絡し契約停止の手続を行います。
必要書類に関しては、各契約先にお問い合わせください。
死後事務委任契約は【相続・生前対策専門】行政書士香川法務事務所にお任せください
このように、死後事務はたくさんの手続を行う必要があり膨大な手間と時間を要すため、対応する人には大きな負担がかかります。
そこで、『死後事務委任契約』を利用し、これらの手続を事前に専門家などに依頼しておくことで、その負担を軽減することが出来ます。
当事務所では『死後事務委任契約』に関してのご相談も承っておりますので、ご自身や身内の方の死後事務に不安がある方はぜひお気軽にお問い合わせください。
投稿者プロフィール

- 行政書士香川法務事務所 代表
- 行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ
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