贈与に関する3つの特例とは?教育資金、住宅取得等資金、結婚・子育て資金

親や祖父母から子や孫へ資金を移すとき、通常は贈与税の対象になります。
しかし、一定の趣旨(教育、住宅取得、結婚・子育て)に沿う贈与については、贈与税が非課税になる特例が用意されています。

こちらの記事では、贈与の特例に関する一般的な内容を解説します。
実際に特例を利用する際には、税理士などの専門家にお問い合わせください。


教育資金一括贈与の特例(最大1,500万円まで非課税)

制度の概要

祖父母や父母など直系尊属が、子・孫など30歳未満の受贈者名義で金融機関の専用口座(信託・預入・証券口座等)に教育資金を一括で贈与した場合、1人あたり最大1,500万円まで贈与税が非課税になります(適用には前年合計所得金額1,000万円以下という受贈者側の所得要件があります)。
なお、制度の適用期間は平成25年4月1日から令和8年(2026年)3月31日までです(2025年10月5日、本記事執筆時)。

非課税となる教育資金の範囲

「教育資金」として認められるのは、学校等へ直接支払う入学金・授業料・保育料・施設設備費や給食費・修学旅行費、学校等が必要と認める学用品費、さらに通学定期や留学渡航費などです。
また、学校等以外(学習塾、スポーツ・芸術の習い事等)に対する費用も対象になりますが、この部分は上限500万円までとなっています。

制度の適用期限など

  • 適用期限:令和8年(2026年)3月31日まで(2025年10月5日、本記事執筆時)。
  • 適用終了・年齢要件:原則として受贈者が30歳に達したときに適用終了となり、未使用残高があれば贈与税の課税対象になります(一定の例外あり)。

注意点

  • 受贈者の前年合計所得金額が1,000万円超の場合適用外。
  • 贈与者が契約期間中に死亡した場合、管理残額の一定額が相続財産に加算される(学校等以外分の控除は上限500万円)。

住宅取得等資金贈与の特例(最大1,000万円/500万円まで非課税)

制度の概要

両親や祖父母など直系尊属から、自宅の新築・取得・増改築等の費用にあてる「住宅取得等資金」の贈与を受けた場合、要件を満たせば一定額まで贈与税が非課税になります。
令和6年1月1日から令和8年12月31日までの贈与が対象となり(2025年10月5日、本記事執筆時)、非課税限度額は、省エネ等住宅なら1,000万円、それ以外の住宅は500万円です。

非課税となるための主な要件

  • 受贈者:贈与時点で18歳以上、その年の合計所得金額2,000万円以下(床面積40㎡以上50㎡未満の住宅は1,000万円以下)など。
    贈与を受けた年の翌年3/15までに資金全額を充当し、概ね翌年12/31までに入居することが必要です。
  • 住宅:床面積40~240㎡で、省エネ等住宅に該当すれば上限が拡大されます。

暦年課税・相続時精算課税との関係

  • 暦年課税の基礎控除(110万円)と同年に併用でき、非課税限度額+110万円まで贈与税ゼロにできるケースがあります。
  • 「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例」を使うと、その後、同じ贈与者からの贈与は一律で相続時精算課税に固定されます(年齢60歳未満の贈与者であっても)。
    長期的な贈与計画に大きく影響するため、選択前に将来の贈与の見通しを十分に検討することが重要です。

結婚・子育て資金一括贈与の特例(最大1,000万円まで非課税)

制度の概要

祖父母・父母など直系尊属が、18歳以上50歳未満の受贈者に対して結婚・妊娠・出産・育児に充てる資金を一括で贈与すると、1人あたり最大1,000万円(そのうち「結婚に係る費用」は300万円が上限)まで非課税になります。
なお、適用には前年合計所得金額1,000万円以下の要件があり、適用期限は平成27年4月1日から令和9年(2027年)3月31日までに贈与したものが対象です(2025年10月5日、本記事執筆時)。

非課税となる資金の範囲

  • 結婚関係費(合計300万円まで):挙式・披露宴費用、結婚に伴う新居の賃貸初期費用(礼金・敷金・仲介手数料・更新料)、引越し費用など(婚姻日前後の一定期間・支払期限の範囲内)。
  • 妊娠・出産・育児費:不妊治療、妊婦健診、出産費用、産後ケア(所定回数上限)、未就学児の医療費、予防接種、保育・幼稚園等の費用、ベビーシッター費など。

適用期限・適用終了時の取り扱い

  • 適用期限:令和9年(2027年)3月31日まで(2025年10月5日、本記事執筆時)。
  • 適用終了:受贈者が50歳に達した日に口座が終了し、残高があれば贈与税課税。
    また、贈与者死亡時に残高があれば相続財産に加算されます。

3つの制度の比較

制度受贈者の主な要件非課税枠主な対象費用・物有効期限(拠出)
教育資金一括贈与30歳未満、前年所得1,000万円以下最大1,500万円(うち学校等以外は500万円まで)入学金・授業料・学用品、通学定期、留学渡航費、塾・習い事等〜令和8年3月31日
住宅取得等資金18歳以上、所得上限あり(通常2,000万円以下)省エネ等住宅1,000万円/その他500万円自宅の新築・取得・増改築・敷地取得等(証明・入居要件あり)令和6〜8年の贈与(〜令和8年12月31日)
結婚・子育て資金一括贈与18歳以上50歳未満、前年所得1,000万円以下最大1,000万円(結婚費用は300万円まで)挙式・新居賃貸初期費・引越、妊娠・出産・保育等〜令和9年3月31日

各特例を有効に活用できるケース

教育資金一括贈与

  • 祖父母の資産を、早いうちから教育へ充当したい家庭に向き。
    学費ピーク(中学受験~大学、留学等)を見据え、一括で原資を確保できるのがメリット。
  • 塾・習い事の割合が多い場合、学校等以外分は上限500万円に注意が必要。
    また、30歳到達時の残高は課税されるので、計画的な払出しと領収書管理が重要。

住宅取得等資金贈与

  • 早期に持ち家を取得したい子ども世帯を、直系尊属がまとまった金額で後押しすることに有効。
    省エネ等住宅を選ぶと非課税枠が拡大(1,000万円)するので、ZEH水準要件や入居・申告期限を満たす設計が必須。
  • 相続時精算課税制度を使うかどうか慎重に判断する必要がある。
    選択した場合には暦年課税に戻せない。

結婚・子育て資金一括贈与

  • 婚姻・出産・保育のタイミングが見えている若年層に対する広範な費用支援に向いている。
  • 受贈者が50歳に到達すると残高に贈与税が課されるため、使い切る前提で設計する。

贈与の特例に関してのご相談は【相続・生前対策専門】行政書士香川法務事務所にお任せください

このように、贈与の特例には「教育資金一括贈与」「住宅取得等資金贈与」「結婚・子育て資金一括贈与」の3つがあります。
各特例にはそれぞれ適用の要件が定められているので、実際に利用する際には必ず専門家に問い合わせることをおすすめします。

弊所では、贈与に詳しい税理士をご紹介すると共に、それに付随する生前対策(遺言書の作成など)のお手伝いも可能ですので、お困りの際にはぜひお気軽にお問い合わせください。

投稿者プロフィール

香川 貴俊
香川 貴俊行政書士香川法務事務所 代表
行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ