特別受益の持戻し免除の意思表示の推定とは?自宅を遺産分割の対象から外すために
相続では、被相続人が生前に特定の相続人へ財産を贈与していた場合、「特別受益」として遺産分割の際に考慮されることがあります。
たとえば、配偶者に自宅を生前贈与していた場合でも、その贈与が特別受益として扱われると、遺産分割の計算上は「すでに相続したもの」として扱われ、その分他の相続財産を取得できなくなる可能性があります。
しかし一定の条件を満たす場合には、「特別受益の持戻し免除の意思表示の推定」という制度により、自宅を遺産分割の対象から外すことが可能になります。
特別受益と持戻しとは
「特別受益」とは、相続人の中に、生前贈与や遺贈によって特別な利益を受けていた人がいる場合に、その利益を考慮して遺産分割を行う制度です。
相続人間の公平を保つため、特別受益にあたる財産は相続財産に加えて計算されます(これを「持戻し」といいます)。
たとえば、生前に1,000万円の贈与を受けていた相続人がいる場合、その1,000万円を含めて相続財産を計算し、各相続人の取得額を調整します。
持戻し免除の意思表示とは
被相続人は、生前贈与や遺贈を行う際に、「この贈与は持戻しの対象にしない」という意思を示すことができます。
これを持戻し免除の意思表示といいます。
この意思表示が認められる場合、その贈与は遺産分割の計算に含める必要がなくなり、受贈者はその財産を取得したうえで、さらに他の相続財産も相続できる可能性があります。
特別受益の持戻し免除の意思表示の推定とは
制度の概要
特別受益の持戻し免除の意思表示の推定とは、一定の条件を満たす場合に、被相続人が明確に意思表示をしていなくても、「持戻し免除の意思があったもの」と法律上推定される制度です。
具体的には、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、配偶者に対して居住用不動産が贈与または遺贈された場合には、持戻し免除の意思表示があったものと推定されます。
この推定により、その不動産は遺産分割の対象に含まれなくなります。
いつ作られた制度か
この制度は、平成30年(2018年)の民法改正により新たに設けられ、令和元年(2019年)7月1日から施行されています。
以前の制度との違い
制度創設前は、配偶者に自宅を贈与していた場合でも、持戻し免除の意思表示が明確に認められない限り、その自宅は特別受益として扱われる可能性がありました。
その結果、自宅を取得していても、その分が相続分に含まれてしまい、預貯金などの他の財産を取得できないケースがありました。
制度創設後は、婚姻期間が20年以上の夫婦間での居住用不動産の贈与または遺贈については、持戻し免除の意思表示があったものと推定されるようになりました。
これにより、明確な意思表示がなくても、自宅を遺産分割の対象から外すことが可能となり、配偶者の生活の安定がより図られるようになりました。
具体例
相続人が妻と子供二人で、相続財産が以下のとおりであったとします。
現預金:3,000万円
自宅不動産:3,000万円
合計:6,000万円
法定相続分は、
妻:1/2(3,000万円)
子供:それぞれ1/4(各1,500万円)
です。

制度創設前
妻が生前に自宅(3,000万円)の贈与を受けていた場合でも、その自宅は特別受益として扱われます。
その結果、妻の相続分3,000万円はすでに自宅で取得しているとみなされるため、現預金から新たに取得できる財産はありません。
最終的な取得額は、
妻:自宅3,000万円のみ
子供:それぞれ1,500万円
となります。
制度創設後
持戻し免除の意思表示の推定が適用される場合、自宅は遺産分割の対象に含まれません。
そのため、遺産分割の対象は現預金3,000万円のみとなります。
これを法定相続分で分けると、
妻:1,500万円
子供:それぞれ750万円
となります。
さらに妻は、自宅3,000万円も取得しているため、
妻:自宅3,000万円+現預金1,500万円=4,500万円
子供:それぞれ750万円
となります。
荒川区の相続・生前対策なら【相続・生前対策専門】行政書士香川法務事務所へ
自宅を配偶者に残すために贈与や遺言をしていても、その内容によっては自宅が遺産分割の対象として扱われ、配偶者が取得できる他の財産が少なくなる場合があります。
特別受益の取扱いは制度の理解が難しく、方法によって結果が変わることもあるため、事前に検討しておくことが大切です。
行政書士香川法務事務所では、遺言書の作成や生前贈与などについて、ご本人のご意向やご家族の状況に応じて対応し、必要に応じて司法書士や税理士などの専門家とも連携しながら、円滑に進めていけるようお手伝いしています。
荒川区にお住まいで、自宅を配偶者に残すための対策をご検討の方や、相続や生前対策についてお考えの方は、【相続・生前対策専門】行政書士香川法務事務所までお気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

- 行政書士香川法務事務所 代表
- 行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ
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