遺言執行者とは

『遺言執行者』とは、遺言の内容を実現するために手続きを行う人のことをいいます。
民法において『相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権限』を与えられており、選任することでスムーズに相続手続きを進められるようになります。

遺言執行者の権限

遺言執行者が、民法において与えられている『相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権限』とは、具体的には以下のようなものが該当します。

  • 相続人調査・相続財産調査
  • 財産目録作成
  • 預貯金払戻及び分配
  • 株式名義変更
  • 自動車名義変更
  • 不動産登記申請手続き
  • 寄付
  • 子どもの認知
  • 相続人廃除及びその取消
  • 保険金受取人変更

このように遺言執行者は遺言内容を執行するために様々な権限を与えられ、独立した立場で職務を遂行していくことが出来ます。
中でも、相続人廃除及びその取消、子どもの認知に関しては遺言執行者にしか出来ない行為なので、それらを被相続人が希望する場合には、必ず遺言執行者を選任する必要があります。
また、以前は「法定相続人に相続させる」という内容の遺言があったときには遺言執行者単独で相続登記することは出来ない、と定められていましたが、2019年7月1日の民法改正によって遺言執行者が単独で登記申請出来るようになりました。
なお、相続税申告は相続人の義務であるため、遺言執行者の権限には含まれていません。

遺言執行者の通知義務

上記のように様々な権限を与えられている遺言執行者ですが、相続人の存在を完全に無視して手続きを進められるわけではありません。
下記のようなルールに基づき、一定のタイミングで相続人に対しての通知義務が課せられています。

【通知の時期】遺言執行者に就任したとき、相続人から請求があったとき、遺言執行が終了したとき
【通知先】相続人全員
【通知すべき内容】遺言執行者に就任した旨や遺言の内容、遺言執行者として行った職務の内容や結果など

遺言執行者が通知義務を果たさず、相続人から請求があったにも関わらず無視するような場合には、相続人は家庭裁判所に対して、遺言執行者解任を求める申し立てを行うことが出来ます。

遺言執行者を選任する方法

遺言書で指定する

遺言者本人が、遺言書の本文に『以下の者を本遺言の遺言執行者として指定する』と記載し、遺言執行者の氏名、住所、生年月日などを併記し依頼する人物を特定することで、遺言執行者を指定することが出来ます。

利害関係人が家庭裁判所に対して選任の申し立てを行う

遺言者が遺言執行者を指定しなかった場合、利害関係人が家庭裁判所に対して選任の申し立てを行い、遺言執行者を選任してもらうことも出来ます。
ここでいう「利害関係人」とは、相続人、受贈者、債権者などを指します。

申し立てを行う裁判所は「遺言者の最後の住所地の家庭裁判所」で、以下の書類などが必要となります(追加書類の提出を求められることもあります)。

  • 申立書
  • 遺言者の死亡の記載のある戸籍謄本
  • 遺言執行者候補者の住民票
  • 遺言書の写し
  • 利害関係、相続関係がわかる資料(戸籍謄本など)

費用に関しては、収入印紙800円と連絡用の郵便切手代がかかります。

誰に依頼するべきか

遺言執行者は、未成年や破産者でない限り誰でもなることが出来、もちろん相続人が就任することも可能です。
ただし、相続人が複数人いて、かつ相続人間の関係性があまり良好ではないようなケースでは、特定の相続人を遺言執行者に指定することで、他の相続人から疑いや反発の声が上がることも考えられます。
そういったケースでは、弁護士や司法書士、行政書士といった第三者的立場の専門家を選任する方がスムーズな手続きが期待出来るでしょう。

なお、遺言執行者として指定された場合、就任するかどうかは遺言執行者が決めることが出来ます。
もし遺言執行者が態度を明らかにしない場合には、相続人は相当の期限を定めて催告し、就任するかどうか決めさせることが出来、確答がない場合は就任したものとみなされます。

遺言執行者の解任及び変更

万が一相続人と遺言執行者の間でもめた場合、相続人は遺言執行者の解任及び変更を申請することが出来ます。
解任を希望する場合、家庭裁判所へ解任の申し立てを行い、認められれば解任されます(解任の申し立てには利害関係人全員の同意が必要)。
さらに変更を希望する場合、解任に続いて遺言執行者選任の申し立てを行えば別の人が選任されます。

なお遺言執行者の解任が認められるには、明らかな任務懈怠などの「正当事由」が必要です。
具体的には以下のような例が該当します。

  • 遺言執行を行わない
  • 財産の使いこみ
  • 行方不明、長期の不在
  • 高額すぎる報酬 
  • 特定の相続人に偏った行動

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このように、遺言執行者を決めることで相続手続きをスムーズに進めることが出来るようになります。
ただし、実際の相続手続きは非常に煩雑で分かりにくく、手間と時間を要します。

当事務所では遺言執行者に関するご相談も承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

投稿者プロフィール

香川 貴俊
香川 貴俊行政書士香川法務事務所 代表
行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ