相続における認知症対策3選 遺言書・成年後見制度・家族信託を解説
昨今の日本では高齢化が進んでいますが、認知症と相続問題は密接に関係しています。
認知症などにより判断能力が低下すると、法律上の契約行為を適切に行うことが難しくなるためです。
例えば、預貯金の払い戻しや不動産の売却など、財産に関する重要な手続きでは本人の意思確認が必要になります。
そのため、判断能力が低下している場合には、これらの手続きを進めることができなくなることがあります。
また、相続対策として遺言書の作成や財産の整理を行おうとしても、判断能力が不十分な状態では契約や意思表示ができないため、生前対策そのものができなくなることもあります。
このような問題を防ぐためには、判断能力が十分にある段階で生前対策を検討しておくことが重要です。
遺言書
遺言書とは
遺言書とは、自分が亡くなった後に財産をどのように分けるかを決めておく法的な文書です。
遺言書を作成しておくことで、相続が発生した際には原則として遺言書の内容に従って相続手続きを進めることになるため、財産の分け方についてあらかじめ自分の意思を示しておくことができます。
遺言書にはいくつかの種類があり、一般的には自筆証書遺言や公正証書遺言などの方法で作成されます。
それぞれ作成方法や手続きが異なるため、内容や状況に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。
認知症対策としての遺言書
遺言書は亡くなった後の財産の分け方を決める制度ですが、認知症対策としても重要な意味があります。
遺言書を作成しておくことで、相続が発生した際に遺産の分け方をあらかじめ決めておくことができるため、相続人同士で遺産分割協議を行う必要がなくなります。
その結果、相続手続きを円滑に進めることができ、相続人間のトラブルを防ぐことにもつながります。
ただし、遺言書を作成するためには、遺言能力と呼ばれる判断能力が必要であり、具体的には、自分の財産の内容や相続人の範囲、遺言の意味などを理解したうえで意思表示を行うことが求められます。
認知症が進行すると、この判断能力が十分でないと判断される可能性があり、その場合には遺言書を作成することができなくなります。
また、判断能力が不十分な状態で作成された遺言書については、その有効性が争われる可能性もあります。
そのため、将来の相続について考えている場合には、判断能力が十分にある段階で遺言書を作成しておくことが望ましいといえます。
遺言書の費用
遺言書の作成には一定の費用がかかります。
自筆証書遺言は自分で作成することができるため基本的には費用はかかりませんが、法務局の遺言書保管制度を利用する場合には3,900円の手数料が必要になります。
公正証書遺言の場合には公証役場で作成するため、公証人手数料が発生しますが、この費用は財産額によって異なります。
また、専門家に作成のサポートを依頼する場合には別途報酬が必要になります。
成年後見制度
成年後見制度とは
成年後見制度(法定後見)とは、認知症などにより判断能力が低下した人を法的に保護する制度です。
家庭裁判所が後見人を選任し、本人に代わって財産管理や契約行為を行うことができ、判断能力の程度に応じて、後見、保佐、補助といった制度が設けられています。
任意後見制度
成年後見制度には、任意後見制度という仕組みもあります。
任意後見制度とは、将来判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ後見人となる人を決めておく制度です。
本人が元気なうちに任意後見契約を結んでおき、判断能力が低下した後に家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで制度が開始されます。
法定後見制度では家庭裁判所が後見人を選任するため、家族以外の専門職が後見人になることもありますが、任意後見制度では本人が信頼できる人を後見人として選ぶことができるという特徴があります。

成年後見制度の費用
成年後見制度を利用する場合には、家庭裁判所への申立て費用が必要になります。
収入印紙や郵便切手などの実費として、数千円から一万円程度の費用がかかることが一般的です。
また、医師による鑑定が必要とされた場合には鑑定費用が発生することもあります。
さらに、後見人として弁護士や司法書士などの専門職が選任された場合には、家庭裁判所が決定する報酬が発生します。
報酬額は個別の事情によって異なりますが、月額数万円程度となるケースもあります。
【注釈】成年後見制度の見直しについて
成年後見制度については本記事執筆現在(2026/3/16)、制度の見直しに関する検討が進められています。
制度改正の方向性や検討内容については、厚生労働省資料をご参照ください。
家族信託
家族信託とは
家族信託とは、自分の財産を信頼できる家族に託し、その財産を管理してもらう制度で、近年、認知症対策として注目されています。
例えば、親が委託者となり、子を受託者として財産管理を任せることで、親が認知症になった場合でも子が財産管理を行うことができるようになります。
家族信託のメリット
家族信託の大きなメリットは、認知症になった後でも財産管理を継続できる点です。
不動産の管理や売却、預金の管理などを受託者が行うことができるため、認知症による財産管理の停滞を防ぐことができます。
また、家族信託では将来の相続を見据えた財産承継の設計を行うことも可能です。
家族信託の費用
家族信託を行う場合には、信託契約書の作成費用や登記費用などが発生します。
専門家に信託契約書の作成を依頼する場合には、数十万円程度の費用がかかるケースが一般的で、不動産を信託財産とする場合には信託登記が必要になるため、登録免許税などの費用も発生します。
制度設計や財産内容によって費用は変わりますが、成年後見制度のように継続的な費用が発生する制度とは異なり、契約時に費用が発生するケースが多いとされています。
荒川区の相続・生前対策なら【相続・生前対策専門】行政書士香川法務事務所へ
相続対策や認知症対策は、ご家族の状況や財産内容によって適切な方法が異なります。
遺言書の作成、成年後見制度の利用、家族信託の設計など、それぞれの制度を適切に活用することで将来のトラブルを防ぐことができます。
行政書士香川法務事務所では、相続手続や生前対策に関するご相談を承っており、ご本人のご意向やご家族の状況を伺いながら、状況に応じた生前対策をご提案いたします。
また、必要に応じて司法書士や税理士などの専門家とも連携し、相続や生前対策を総合的にサポートしています。
荒川区で相続手続や生前対策についてお悩みの方は、【相続・生前対策専門】行政書士香川法務事務所までお気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール

- 行政書士香川法務事務所 代表
- 行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ
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