葬儀費用は相続財産から支払える?|立て替えた場合の遺産分割と相続税の取扱いを解説
葬儀費用はまとまった金額になるため、相続人の一人が立て替え、後から亡くなった方の預貯金で精算することもあります。
しかし、葬儀費用は当然に亡くなった方の債務となるわけではなく、相続人の判断だけで遺産から差し引けるものでもありません。
誰が費用を負担するのか、遺産から精算する場合にどのような合意が必要なのかを確認せずに手続を進めると、他の相続人とのトラブルにつながる可能性があります。
葬儀費用は当然に相続財産から支払われるわけではない
亡くなった方が生前に負っていた借金や未払金は相続の対象になりますが、葬儀費用は亡くなった後に発生するため、原則として被相続人の債務には含まれません。
そのため、相続人の一人が葬儀費用を立て替えたとしても、その金額が自動的に遺産から差し引かれ、他の相続人にも当然に負担を求められるわけではありません。
誰が葬儀費用を負担するかは一律に決まらない
葬儀社との関係では、葬儀を申し込んで契約を締結した人が費用を支払うことになります。
一方、相続人間で最終的に誰が負担するのかについては、亡くなった方の意思、地域や親族間の慣習、葬儀を執り行った経緯、相続人同士の合意などによって判断が分かれるため、「喪主が必ず全額を負担する」「相続人全員が法定相続分に応じて負担する」と一律に決めることはできません。
まずは葬儀社との契約書や請求書の名義、実際に支払った人を確認し、葬儀費用を遺産から精算するかどうかを相続人全員で話し合う必要があります。

相続人全員が合意すれば遺産から精算できる
葬儀費用は遺産分割の対象となる相続財産ではありませんが、相続人全員が合意すれば、立て替えた葬儀費用を亡くなった方の預貯金から精算したうえで、残った財産を分けることができます。
たとえば、相続財産である預貯金が420万円、相続人が立て替えた葬儀費用が50万円であれば、最初に50万円を立替者へ返し、残額370万円を遺産分割の対象とする方法が考えられます。
ただし、葬儀の規模や内容を他の相続人へ相談せずに決めた場合や、香典を受け取った人と費用を負担した人が異なる場合には、費用の全額を遺産から支払うことについて合意を得られない可能性もあるため、請求書や領収書を示しながら確認することが大切です。
遺産分割協議書に精算方法を記載する
葬儀費用を遺産から精算する場合には、後から認識の違いが生じないよう、遺産分割協議書に立替者、金額、支払元となる財産、残った財産の分け方を記載しておくと安心です。
たとえば、「相続人甲が立て替えた葬儀費用50万円は、被相続人名義の〇〇銀行〇〇支店の預金から甲が取得し、同預金の残額を甲と乙が各2分の1の割合で取得する」といった形で、精算後の分け方まで明確にします。
もっとも、遺産分割協議書の記載方法は相続財産や分割内容によって異なるため、上記の文例をそのまま使用せず、個別の状況に合わせて作成する必要があります。
合意できない場合は遺産から差し引かない
他の相続人が葬儀費用の金額や精算に納得していない場合、一部の相続人だけで費用を遺産から差し引いて分割することはできません。
葬儀費用の負担について争いが生じた場合には、遺産分割とは別の問題として解決しなければならないこともあるため、相続人間の交渉や法的な対応が必要な場合は弁護士へ相談する必要があります。
亡くなった方の預金から葬儀費用を引き出す場合の注意点
亡くなった方の預金は相続財産となるため、相続人の一人がキャッシュカードを使って葬儀費用を引き出す場合には、金額や使途を他の相続人へ説明できるようにしておかなければなりません。
無断で預金を引き出すと、使途不明金を疑われたり、遺産を勝手に取得したと受け取られたりする可能性があるため、できる限り事前に相続人へ伝え、葬儀社の請求書、領収書、引き出した金額が分かる通帳の写しなどを保管しておきましょう。
すでに金融機関が口座名義人の死亡を把握して口座が凍結されている場合には、キャッシュカードによる引き出しはできないため、金融機関所定の相続手続を行うか、遺産分割前の預貯金仮払制度の利用を検討します。
相続税の計算では一定の葬儀費用を控除できる
民事上、誰が葬儀費用を負担するかという問題と、相続税の計算上、葬儀費用を遺産総額から控除できるかという問題は分けて考える必要があります。
相続税を計算する際には、相続や遺贈によって財産を取得した人が実際に負担した一定の葬式費用を、取得した財産の価額から差し引くことができます。
控除できる葬式費用
| 費用の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 火葬・埋葬・納骨にかかった費用 | 火葬料、埋葬料、葬送に伴う納骨費用など |
| 遺体や遺骨の搬送費用 | 寝台車、霊柩車、遺骨の運搬費用など |
| 通常の葬式に欠かせない費用 | 通夜・告別式の会場費、葬儀社への支払い、通夜振る舞いなど |
| 寺院などへの謝礼 | お布施、読経料、戒名料など |
| 遺体の捜索・運搬費用 | 遺体の捜索や搬送のために支払った費用 |
控除できない費用
| 費用の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 香典返しの費用 | 香典を受け取った人への返礼品代 |
| 墓石・墓地に関する費用 | 墓石や墓地の購入費、墓地の借入料など |
| 法事に関する費用 | 初七日、四十九日、一周忌などの法要費用 |
葬儀と初七日を同じ日に行い、葬儀社の請求書で費用がまとめられている場合など、どこまで控除できるか判断しにくいケースもあるため、相続税申告が必要な場合には税理士へ確認する必要があります。
(参考:国税庁「No.4129 相続財産から控除できる葬式費用」)
請求書や領収書は必ず保管する
葬儀費用を遺産から精算する場合にも、相続税の計算で控除する場合にも、誰が、いつ、何のために、いくら支払ったのかを確認できる資料が必要になります。
葬儀社、火葬場、飲食店、返礼品業者などから受け取った請求書や領収書はまとめて保管し、現金で支払った場合には支払者も記録しておきましょう。
お布施など領収書が発行されない費用については、支払日、支払先、金額、目的を記録したメモを残しておくことで、相続人への説明や相続税申告の際に確認しやすくなります。

葬儀費用と相続に関するよくある質問
香典は相続財産に含まれますか?
香典は、一般に葬儀費用の負担を軽くする目的で喪主や遺族へ贈られるものであり、亡くなった方の相続財産には含まれません。
ただし、香典を誰が受け取り、葬儀費用へどのように充てるかについて相続人間で認識が異なるとトラブルにつながるため、葬儀費用の精算と併せて確認しておくことが大切です。
葬儀費用は法定相続分に応じて負担しますか?
葬儀費用は相続債務ではないため、相続人が当然に法定相続分の割合で負担するわけではありません。
相続人全員で合意した場合には法定相続分に応じて負担することもできますが、合意がないまま他の相続人へ支払いを求めることは避ける必要があります。
相続放棄を検討していても遺産から支払えますか?
相続放棄を検討している場合、亡くなった方の預貯金を引き出して葬儀費用へ充てると、その後の相続放棄に影響する可能性があります。
個別の事情によって判断が異なるため、遺産に手を付ける前に弁護士へ相談してください。
荒川区の相続・遺言は【相続・遺言専門】行政書士香川法務事務所へ
葬儀費用を相続人の一人が立て替えている場合には、費用の内容と支払額を確認し、相続人全員の合意を得たうえで精算方法を遺産分割協議書へ正確に記載する必要があります。
行政書士香川法務事務所では、相続人・相続財産調査、戸籍収集、相続関係説明図や遺産分割協議書の作成、預貯金の解約・払戻しなどを一貫して承っており、不動産の相続登記や相続税申告が必要な場合には、司法書士や税理士と連携して対応いたします。
荒川区で葬儀費用の立替分を反映した遺産分割協議書の作成や、その後の預貯金相続手続にお困りの方は、行政書士香川法務事務所へご相談ください。

この記事の執筆者

- 行政書士香川法務事務所 代表
- 行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ
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