遺産分割後に新たな財産が見つかったら?|協議のやり直し・負債・相続税への対応を解説

相続人全員で遺産分割協議を行い遺産分割協議書も作成した後に、被相続人名義の預貯金や不動産などが新たに見つかることがあります。

特に、長期間利用していなかった銀行口座や家族が存在を知らなかった有価証券、遠方にある不動産などは、相続手続きを進める段階で把握できないことも多いでしょう。

さらに、後から判明するのは預貯金や不動産などのプラスの財産だけとは限らず、借金や未払金などの負債が見つかることもあります。

そのため、遺産分割後に新たな財産が判明した場合に備えて、プラスの財産とマイナスの財産それぞれの対処法を知っておくことが大切です。

遺産分割後に見つかりやすい財産

遺産分割協議を行うためには、まず被相続人が所有していた財産を調査し、その内容を把握したうえで、誰が何を相続するのかを決めていきます。

しかし、十分に財産調査を行ったつもりでも、長期間利用されていない口座や家族が存在を知らない財産などは見落とされ、遺産分割協議が成立した後になって初めて発見されることがあります。

例えば、遺産分割後に見つかる財産としては、次のようなものが挙げられます。

・長期間使用していなかった預貯金

・通帳を発行しないネット銀行の預貯金

・株式、投資信託などの有価証券

・家族が存在を知らなかった土地や建物

・他人に貸していたお金

・未受領の保険金や給付金など

・自宅などに保管されていた現金や貴金属

原則として遺産分割協議をすべてやり直す必要はない

遺産分割後に新たな財産が見つかった場合でも、原則として、それまでに行った遺産分割協議を最初からやり直す必要はありません

既に成立した遺産分割協議はそのまま維持したうえで、新たに見つかった財産についてのみ、相続人全員で誰が取得するのかを話し合うことが可能です。

例えば、遺産分割協議によって長男が自宅不動産、長女が預貯金を取得した後、被相続人名義の別の銀行口座から300万円が見つかった場合でも、自宅不動産や既に分割した預貯金まで改めて分け直す必要はなく、新たに見つかった300万円についてのみ遺産分割協議を行います。

その後、新たな財産について分割方法が決まったら、その財産を対象とした遺産分割協議書を新たに作成し、金融機関などで必要な相続手続きを行います。

遺産分割協議書に定めがある場合

最初に作成した遺産分割協議書に、新たな財産が見つかった場合の取得者があらかじめ定められているケースもあります。

例えば、

「本協議書に記載のない遺産が後日判明した場合は、相続人○○がこれを取得する」

などの定めがある場合には、新たに見つかった財産について改めて遺産分割協議を行う必要はなく、その内容に従って新たな財産を取得させることが可能です

遺産分割協議のやり直しが必要となるケース

先述の通り、新たな財産が見つかった場合でも、原則として既に成立した遺産分割協議はそのまま有効ですが、事情によっては当初の遺産分割協議をやり直す必要が生じることもあります。

新たな財産を知っていれば合意しなかった場合

後から見つかった財産が遺産全体から見て非常に大きく、その存在を知っていれば当初の内容で遺産分割協議に合意しなかったと考えられる場合には、既に成立した遺産分割協議をやり直す必要が生じる可能性があります

例えば、相続人が把握していた遺産が預貯金1,000万円だけだったため、それを前提として分割方法を決めたところ、後から数千万円相当の不動産が見つかったような場合です。

ただし、「後から大きな財産が見つかった」という理由だけで、それまでの遺産分割協議が当然に無効になるわけではなく、当初の遺産分割協議がどのような認識のもとで成立したのか、新たな財産の存在が協議内容にどの程度影響していたのかなど、具体的な事情によって判断されることになります

相続人の一人が財産を隠していた場合

相続人の一人が被相続人の財産を把握していたにもかかわらず、その存在を他の相続人に知らせないまま遺産分割協議を成立させていた場合にも、当初の遺産分割協議をやり直す必要が生じる可能性があります。

例えば、被相続人に多額の預貯金があることを知っていた相続人が、その存在を意図的に隠したまま他の財産だけを対象として遺産分割協議を成立させたような場合です。

このような場合には、詐欺などを理由として当初の遺産分割の効力が争われる可能性があり、相続人間で争いになった場合には弁護士への相談が必要になります

相続人全員が遺産分割のやり直しに合意した場合

相続人全員が合意すれば、既に行った遺産分割の内容を改めて変更することが可能です

ただし、一度成立した遺産分割によって各相続人に帰属した財産を、その後の合意によって別の相続人へ移す場合には、税務上、当初の相続とは別の財産移転として扱われ、贈与税や譲渡所得税などが発生する可能性があるため、遺産分割全体をやり直す場合には税務上の影響にも十分注意する必要があります

遺産分割後に新たな負債が見つかった場合

遺産分割後に見つかるものは、預貯金や不動産などのプラスの財産だけではありません。

被相続人が金融機関から借入れをしていた、知人からお金を借りていた、未払いの税金や医療費があったなど、相続手続きが進んでから負債が判明することもあります。

負債は遺産分割協議だけで自由に分けることはできない

被相続人の金銭債務などは、相続開始によって法定相続分に応じて各相続人に承継されるのが原則です

そのため、相続人同士で「借金は長男がすべて負担する」と決めることはできますが、その合意だけで他の相続人が借金の支払い義務から外れるわけではなく、長男だけが借金を引き継ぐ形にするためには、債権者の承諾が必要です

したがって、遺産分割後に新たな負債が見つかった場合には、相続人間で決めた遺産分割の内容だけで負担する人を判断するのではなく、各相続人がどの範囲で債務を承継しているのかを確認したうえで対応する必要があります。

相続放棄を検討する場合

相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要がありますが、遺産分割協議まで終わっている段階では、既にこの期間を経過していることも多く、相続放棄が難しくなっている可能性があります。

ただし、被相続人に相続財産がまったくないと信じ、そのように信じることについて相当な理由があった場合など、事情によっては3か月が経過した後でも相続放棄が認められる余地があります

逆に、既に遺産分割協議を行ったり相続財産を処分したりしている場合には、相続を単純承認したものとみなされる可能性もあるため、「後から負債が見つかった場合は、その時から3か月以内であれば相続放棄できる」と単純に考えることはできません。

そのため、遺産分割後に多額の負債が判明し、相続放棄を検討する場合には、できるだけ早い段階で弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。

相続税の申告後に新たな財産が見つかった場合

相続税の申告を済ませた後に新たな相続財産が見つかった場合には、遺産分割だけでなく相続税への影響も確認しなければなりません。

相続税は、現金や預貯金、不動産、有価証券など、原則として相続や遺贈によって取得した経済的価値のある財産をもとに計算されます。

そのため、新たな財産が見つかったことで既に申告した相続税額が不足する場合には、修正申告が必要になります。

相続税が増える場合は修正申告を行う

相続税の申告後に新たな財産が判明し、本来納めるべき税額が既に申告した税額より多くなった場合には、修正申告によって申告内容を訂正します

修正申告によって追加で納付する相続税が生じた場合には、本来の相続税の申告・納付期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内)までに納めるべき税額を納付していなかった期間に応じて、延滞税が課されることがあります

また、本来より少ない相続税額で申告していた場合には、過少申告加算税が課されることがあります

ただし、税務署から相続税について調査を行う旨の事前通知を受ける前に自主的に修正申告を行った場合には、原則として過少申告加算税は課されません。

一方、財産を意図的に隠したり、虚偽の資料を提出したりするなど、仮装・隠蔽があった場合には、過少申告加算税ではなく重加算税の対象となる可能性があります

そのため、新たな財産が判明した際は放置せず、できるだけ早く税理士へ相談し、必要に応じて修正申告を行うことが大切です。

相続税の申告が不要だった場合も確認する

当初は遺産総額が相続税の基礎控除額以下だったため、相続税の申告をしていなかった場合でも、新たな財産が見つかったことで遺産総額が基礎控除額を超えることがあります

相続税の基礎控除額は、

3,000万円+600万円×法定相続人の数

によって計算します。

新たな財産を加えた結果、この基礎控除額を超える場合には、相続税の申告が必要となる可能性があるため注意しましょう。

税額が少なくなる場合は更正の請求を検討する

新たな財産の分割方法によっては、配偶者の税額軽減小規模宅地等の特例などの適用関係が変わり、既に申告した相続税額より税負担が少なくなることもあります

このような場合には、「更正の請求」によって、納めすぎた相続税の減額や還付を求めることができます

更正の請求には期限があり、通常は法定申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内)から5年以内に行う必要があります

ただし、遺産分割が成立したことなど一定の後発的な事由がある場合には、通常の更正の請求期限を過ぎていても、その事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内であれば、更正の請求が認められる場合があります

そのため、新たな財産が見つかり、相続税額に影響する可能性がある場合には、できるだけ早く税理士へ相談することをおすすめします。

遺産分割後のトラブルを防ぐための対策

遺産分割協議の前に漏れのない財産調査を行う

最も大切なのは、遺産分割協議を始める前に被相続人の財産をできる限り漏れなく調査しておくことです

預貯金については、自宅に残された通帳やキャッシュカードだけでなく、金融機関からの郵便物、既に判明している口座の入出金履歴、スマートフォンやパソコンに残されたネット銀行の利用状況なども手掛かりになります。

また、不動産については、固定資産税の納税通知書や権利証などを確認するほか、市区町村で名寄帳を取得することで、その市区町村内に所有している不動産をまとめて確認できます。

さらに、有価証券については証券会社から届いた書類などを調べ、利用していた証券会社が分からない場合には、証券保管振替機構(ほふり)への加入者情報開示請求を利用できる場合があります。

このほか、借入金、クレジットカードの利用残高、未払いの税金など、負債についても併せて調査しておきましょう。

遺産分割協議書に新たな財産が見つかった場合の取り扱いを記載する

財産調査を十分に行っても、すべての相続財産を確実に把握できるとは限りません。

そこで、遺産分割協議書を作成する際に、後から新たな財産が見つかった場合の取り扱いをあらかじめ定めておく方法があります

例えば、「本協議書に記載のない遺産が後日判明した場合は、相続人○○がこれを取得する」という形で取得者を定めておく方法や、「本協議書に記載のない遺産が後日判明した場合は、相続人全員で改めて協議してその帰属を決定する」と定めておく方法があります。

どのような条項が適しているかは、相続人の人数や財産の内容、既に決めた分割割合などによって異なるため、将来新たな財産が見つかった場合まで想定して内容を決めておくことが大切です。

遺言書にも新たな財産の取得者を定めておく

遺産分割後の問題を防ぐためには、相続が発生する前の遺言書作成も重要です。

遺言書で不動産や預貯金などを一つずつ指定して取得者を決めるだけでは、遺言書を作成した後に取得した財産や、遺言者自身が存在を把握していなかった財産が遺言の対象から漏れる可能性があります。

そのため、個別の財産について取得者を指定したうえで、

「前各条に記載した財産以外の遺言者に属する一切の財産は、○○に相続させる」

など、遺言書に記載されていない財産についても取得者を定めておく方法があります

このような包括的な条項を設けておけば、遺言書作成後に新たな財産を取得した場合や、相続開始後に遺言書へ個別に記載されていない財産が見つかった場合でも、その財産の帰属を明確にしやすくなります。

ただし、遺留分を侵害する内容となっている場合には、相続開始後に遺留分侵害額請求が行われる可能性があるため、遺言書全体の内容を踏まえて作成することが大切です。

荒川区の相続・遺言は【相続・遺言専門】行政書士香川法務事務所へ

遺産分割協議を終えた後に新たな預貯金や不動産などが見つかった場合でも、原則として既に成立した遺産分割協議を最初からやり直す必要はなく、新たに見つかった財産について対応することになります。

一方で、後から見つかるのはプラスの財産だけではなく、借金などの負債が判明することもあるため、状況に応じた適切な対応が重要です。

行政書士香川法務事務所では、戸籍収集による相続人調査、相続財産の調査、相続関係説明図や遺産分割協議書の作成、預貯金の相続手続きなど、相続に必要な各種手続きを承っており、また、不動産の相続登記が必要な場合には司法書士、相続税の申告や修正申告が必要な場合には税理士とも連携し、ご相談内容に応じて対応いたします。

荒川区で遺産分割後に新たな財産が見つかった場合の対応や、相続財産調査、遺産分割協議書の作成、遺言についてお悩みの方は、お気軽に行政書士香川法務事務所までご相談ください。

この記事の執筆者

香川 貴俊
香川 貴俊行政書士香川法務事務所 代表
行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ