遺留分とは?最低限確保できる相続財産の割合

『遺留分(いりゅうぶん)』とは、民法に規定された相続に関する権利であり、一定の法定相続人が最低限確保できる相続財産の割合のことをいいます。

遺言や生前贈与などによって特定の相続人にすべての財産が渡るような場合でも、遺留分権利者は自身の取り分を主張することが出来ます。

遺留分の目的

遺留分は、法定相続人が最低限の財産を確保できるようにするための制度です。

日本の相続制度では、基本的に被相続人(亡くなった人)は遺言で財産の分配を自由に決められます。
しかし、すべての財産を特定の人に相続させてしまうと、残された家族の生活が困窮する恐れがあり、そういった事態に陥ることを防止するために遺留分という制度が設けられました。

遺留分の放棄

遺留分は放棄できます。
そのため、仮に遺言書に「配偶者に全財産を相続させる」と書いてあったとしても、その他の相続人全員がその遺言書の内容に納得していれば、問題なく手続を進められます。

また、被相続人の生前に、相続人が自身の遺留分を放棄することもできますが、家庭裁判所に対して申し立てる必要があり、かつ認められる条件も厳しいため、実際に生前に遺留分放棄する事例は多くはありません。

遺留分権利者

遺留分を主張できる者のことを『遺留分権利者』といい、具体的には以下の者があたります。

  • 配偶者
  • 直系卑属(子や孫)
  • 直系尊属(父母や祖父母)

なお、兄弟姉妹には遺留分がありません。

遺留分の割合

遺留分の割合は相続人の構成によって異なり、具体的な割合は以下のとおりです。

相続人法定相続分のうち遺留分が占める割合相続人ごとの遺留分
配偶者父母兄弟姉妹
配偶者のみ2分の12分の1
配偶者と子2分の14分の14分の1
配偶者と父母2分の16分の26分の1
配偶者と兄弟姉妹2分の12分の1なし
子のみ2分の12分の1
父母のみ3分の13分の1
兄弟姉妹のみなしなし

遺留分侵害額請求

実際に、自身の遺留分が侵害されていることを確認した場合、侵害した相手に『遺留分侵害額請求』を行うことで、遺留分侵害額分を「お金で(金銭的賠償)」返してもらうことが可能となります。

遺留分減殺請求

遺留分侵害額請求は、2019年7月1日に施行された改正相続法によって制定された制度ですが、改正前は、『遺留分減殺請求』という制度が運用されていました。
これは、遺留分を「お金(金銭的賠償)」ではなく「遺産そのもの(物権的請求)」で取り戻す手続きでした。

しかし、その遺産が不動産など現金以外のものである場合では、遺留分減殺請求を行うことで、結果としてその不動産が「侵害者と請求者の共有状態」となってしまうようなケースもあり、非常に使い勝手が悪い制度でした。

そこで、より遺留分に関してのトラブルをスムーズに解決できるよう、「遺産そのもの」ではなく「お金で」取り返すことができる遺留分侵害額請求という制度がつくられました。

遺留分侵害額請求手続

請求期限

遺留分侵害額請求は、相続の開始および侵害を知った時から1年以内に行う必要があります。
知らなかった場合でも、相続開始から10年以内が期限です。

請求方法

話し合い

遺留分侵害額請求を行う際、まずは相手との話し合いから始めます。
両者が落ち着いて話し合いができそうであれば、電話やメールなどでやり取りを行っても問題ないですが、もめそうなであれば、内容証明郵便で請求書を送るなどの手段を取ることになります。

上記の方法で両者が合意できたら「遺留分侵害額についての合意書」を作成し、合意内容に従い支払いを受けます。

話し合いで合意できなかった場合には、家庭裁判所に対して『遺留分侵害額請求調停』を申し立てます。
申し立てる裁判所の管轄は、相手の住所地の家庭裁判所です。
調停を申し立てると、家庭裁判所の2名の調停委員が間に入って調整を進めることになり、相手が「遺留分を払いたくない」と主張しても、調停委員が遺留分侵害額に関しての法的根拠などを説明し対応してくれます。

そして、遺留分侵害額の金額や支払い方法について合意ができれば調停が成立して、支払いを受けます。

調停で話し合っても合意できなかった場合には、『遺留分侵害額請求訴訟』を行います。
そして裁判所が遺産を評価して遺留分を計算し、相手に支払い命令を下します。
この場合、調停とは違い話し合いではないので、当事者の合意は不要となります。

実際に遺留分侵害額請求を行う際には、弁護士など専門家にお問い合わせください。

投稿者プロフィール

香川 貴俊
香川 貴俊行政書士香川法務事務所 代表
行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ