土地の分筆とは?|相続・生前対策で知っておきたいメリット・デメリットを行政書士が解説

相続の際、土地は現金のように均等に分けることが難しく、また、遺産分割の方法によっては将来の管理や売却にも大きな影響を与えるため、どのように分けるかが重要な問題となります。

そのような場面で選択肢の一つとなるのが、「分筆」です。

土地の分筆とは?

土地の分筆とは、登記簿上で一つの土地(1筆の土地)を複数に分け、それぞれを独立した土地として登記する手続きのことをいいます(なお、土地は「1筆(いっぴつ)」「2筆」と数えます)。

例えば、登記簿上で「100番」という1筆の土地を分筆すると、「100番1」「100番2」のように新たな地番が付され、それぞれの土地について売買や贈与、相続、抵当権の設定などを独立して行うことができるようになります。

相続では、相続人ごとに土地を分けたい場合や、一部だけを売却したい場合、生前贈与を行いたい場合などに分筆が利用されますが、土地の一部へフェンスを設置したり、境界を目印で区切ったりしただけでは分筆したことにはならず、登記簿上で正式に土地を分けるためには、法務局へ分筆登記を申請する必要があります。

なお、反対に、複数の土地を一つの土地へまとめる登記手続きを「合筆(がっぴつ)」といいます。

合筆は、隣接する土地を一体として利用したい場合などに行われますが、所有者や地目、権利関係など一定の条件を満たす必要があるため、全ての土地を自由に合筆できるわけではなく、一度分筆した土地でも必ず元に戻せるとは限りません。

土地を分筆するメリット

共有名義を避けられる

土地を分筆する最大のメリットの一つは、相続人ごとに土地を単独で取得できるため、共有名義を避けられることです。

相続財産に土地が含まれている場合には、「長男は土地の東側」「次男は西側」というように、土地を相続人ごとに分けて取得したいと希望することがあります。

しかし、登記簿上で1筆のままでは、土地の一部だけを単独で所有することはできません。

そこで、それぞれが取得する部分を分筆して独立した土地として登記すれば、各相続人が単独所有者となり、自分が取得した土地については、原則として他の相続人の同意を得ることなく売却や建物の建築などを行えるようになります

一方、分筆せずに共有名義のまま相続すると、土地全体を売却するには原則として共有者全員の同意が必要となるほか、建物の建て替えや大規模な土地活用についても共有者との協議が欠かせません。

さらに、共有者が亡くなると持分は相続人へ承継されるため、兄弟2人で共有していた土地でも、その後それぞれの子どもが相続すれば共有者は4人となり、相続が繰り返されるたびに権利関係は複雑になっていきます。

共有者の中に遠方へ転居した人や認知症になった人、未成年者、所在不明者などがいると、売却や建て替えの手続きが大きく滞るおそれもあります。

このような事態を避けるためにも、土地を合理的に分けられるのであれば、あらかじめ分筆して相続人ごとに単独所有としておくことで、将来の権利関係を明確にし、相続トラブルの防止にもつながります。

一部だけを売却しやすくなる

土地を分筆すると、一部だけを独立した土地として売却できるようになります

例えば、300㎡の土地のうち100㎡だけを売却したい場合は、売却する部分を独立した土地として分筆・登記することで、その土地だけを第三者へ譲渡できるようになります

そのため、必要な資金を確保しながら残りの土地を引き続き所有できるほか、相続税の納税資金や相続手続きに必要な費用を確保したい場合、広い土地のうち自宅部分だけを残して残りを売却したい場合、駐車場や賃貸住宅として利用している土地の一部だけを処分したい場合などにも活用されています。

ただし、売却する部分だけを優先して分筆すると、残った土地の形状が悪くなったり、道路への接し方が不十分になったりして資産価値が下がるおそれがあるため、売却する土地だけでなく、手元に残す土地の利用方法や建築の可否まで見据えた上で、分筆位置を決めることが重要です。

土地を有効活用しやすくなる

分筆した土地は、それぞれ独立した不動産として扱われるため、土地ごとに異なる用途で活用しやすくなります

例えば、自宅敷地の一部を駐車場として貸し出したり、自宅と賃貸住宅の敷地を分けて利用したりするなど、土地ごとに異なる用途を持たせることができ、また、利用目的を明確にしておくことで、将来一部を売却したり、相続人ごとに承継させたりする際にも権利関係を整理しやすくなります。

一方で、分筆によって土地が小さくなり過ぎたり、使いにくい形状になったりすると利用価値が下がることもあるため、現在の利用状況だけでなく、将来の建築計画や売却予定も踏まえて判断することが大切です。

生前贈与を行いやすくなる

土地を分筆することで、自宅の敷地全体ではなく、一部だけを子どもへ生前贈与できるようになります

例えば、自宅敷地の一部を子どもへ贈与したい場合は、贈与する部分を分筆して独立した土地とすることで、贈与の対象が明確になり、所有権移転登記も円滑に進められます
また、将来的に複数の子どもへ順次贈与する予定がある場合でも、誰にどの土地を承継させるのかを明確にできます。

ただし、生前贈与では贈与税だけでなく、不動産取得税や登録免許税などの負担が生じることもあり、相続によって取得する場合より税負担が大きくなる可能性もあります。

そのため、生前贈与を検討する際は、分筆費用や税負担を含めた全体の費用や影響を踏まえた上で判断し、必要に応じて税理士へ相談すると安心です。

土地を分筆するデメリット

土地の価値が下がることがある

分筆は土地を利用しやすくするために行われる一方で、分け方によっては土地の価値が下がることがあります

例えば、長方形だった土地を無理に二つへ分けた結果、細長い土地や三角形に近い土地になると、建物の配置が難しくなって買い手が見つかりにくくなるほか、面積が小さくなり過ぎることで建築できる建物の規模が制限されたり、希望する用途で利用できなくなったりすることもあります。

土地の価値は面積だけで決まるものではなく、形状や接道状況、使いやすさなども大きく影響するため、同じ面積であっても分筆方法によって評価額や市場価格が変わることは珍しくありません。

そのため、相続では「公平に分けたい」という考えだけで分筆を進めるのではなく、分筆後も十分に利用価値のある土地となるかを見据えて検討することが重要です。

建築できなくなる可能性がある

分筆を検討する際に特に注意したいのが、建築基準法上の接道義務です。

建物を建築するためには、原則として幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならないため、分筆によって道路に接しない土地や接道幅が2メートル未満となる土地が生じると、新たに建物を建築できなくなる可能性があります

現在建物が建っている土地であっても、分筆後は建て替えができなくなるケースがあるため、事前に接道状況を十分確認しておくことが重要です。

また、自治体によっては最低敷地面積が定められている地域もあり、その基準を下回る土地へ分筆すると、新たな建築が認められないことがあります。

建築できる土地として利用できるかどうかは資産価値にも大きく影響するため、分筆を進める際は、土地家屋調査士や建築士などの専門家へ相談しながら検討すると安心です。

測量や登記には時間と費用がかかる

土地を分筆するためには、土地家屋調査士へ依頼して測量や境界確認を行い、その後に分筆登記を申請するのが一般的であり、登記申請だけで完了する手続きではありません。

現地調査や測量、隣接地所有者との境界確認、図面作成など多くの工程を経て初めて法務局へ登記申請できるため、境界が明確であれば比較的短期間で完了することもありますが、隣接地所有者との調整が必要な場合や境界について意見が一致しない場合には、手続きが数か月以上に及ぶこともあります

また、土地の状況によって異なりますが、測量費用や登記費用として数十万円以上かかることも珍しくなく、境界が確定していない土地や隣接地が多い土地では100万円を超えるケースもあります

そのため、相続税の申告期限や土地売却の予定がある場合には、時間的な余裕を持って準備を進めるとともに、費用に見合う効果が得られるかどうかも十分に検討した上で分筆を判断することが大切です。

一度分筆すると元に戻せない場合がある

分筆した土地は、条件を満たせば合筆によって再び一つの土地にまとめられることがありますが、地目や所有者、権利関係などが異なる土地は合筆できないため、いつでも元の状態へ戻せるわけではありません

また、分筆後に建物が建築された場合などは、実質的に元の状態へ戻すことが難しくなり、その後何十年にもわたって土地の利用方法へ影響を及ぼすこともあります。

そのため、分筆を行う際は、将来的な売却や建築計画、相続方法まで見据えた上で、本当に分筆する必要があるのかを慎重に検討することが重要です。

土地を分筆する流れ

1.分筆の必要性を検討する

まずは、本当に分筆が必要かを検討します

相続では、共有名義を避けるために分筆が有効な場合もありますが、代償分割や換価分割など他の遺産分割方法の方が適しているケースもあります。

また、土地の形状によっては分筆後に利用価値が大きく下がることもあるため、「分けられるか」だけではなく、「分けた方がよいか」という視点で、土地の利用目的や将来の売却予定、相続人の希望なども踏まえながら総合的に判断することが重要です。

2.土地家屋調査士へ相談する

分筆登記は土地家屋調査士の専門業務であり、分筆を進める際は、まず土地家屋調査士へ相談するのが一般的です。

相談では、分筆の目的や土地の状況を伝えた上で、必要な手続きや概算費用、完了までのおおよその期間について説明を受けます。

その後、土地家屋調査士が登記事項証明書や公図、地積測量図などの資料を確認するとともに現地調査を行い、分筆が可能かどうかや、どのような分け方が適しているかを検討します。

なお、相続による分筆であれば、相続手続き全体を見据えながら進めるため、必要に応じて行政書士や司法書士など他の専門家と連携することもあります。

3.法務局や役所で資料を調査する

分筆方法を検討するため、土地家屋調査士が法務局や自治体で必要な資料を収集します

法務局では登記事項証明書や公図、地積測量図などを確認し、自治体では都市計画や道路、建築制限などの情報を調査するほか、土地によっては道路や水路との境界に関する資料も確認し、分筆後に問題が生じないかを事前に把握します。

4.現地調査と分筆案を作成する

資料調査が終わると、実際に現地を確認して土地の形状や境界標の有無、接道状況などを調査し、その結果を踏まえて、どの位置で分筆すれば利用しやすく資産価値も維持できるかを検討しながら分筆案を作成します

分筆位置によっては建築できなくなる土地が生じたり、土地の価値が下がったりすることもあるため、将来の利用方法まで見据えながら十分に打ち合わせを行い、慎重に分筆位置を決定することが重要です。

5.測量と境界確認を行う

分筆するためには、土地の境界を正確に確定する必要があるため、土地家屋調査士が測量を行い、必要に応じて隣接地所有者や道路管理者などの立会いのもとで境界を確認しながら、境界標の設置や境界確定図などの作成を進めます

境界が既に明確になっている土地であれば比較的円滑に進みますが、境界について認識が一致しない場合には調整や協議が必要となり、解決までに時間を要することもあります。

6.分筆登記を申請する

測量や必要書類の作成が完了したら、法務局へ分筆登記を申請します

登記が完了すると、それぞれの土地に新しい地番が付され、登記簿上でも独立した土地として扱われるため、売却や贈与、相続、抵当権の設定などを土地ごとに行えるようになります。

なお、分筆登記は土地を分けるための手続きであって所有権を移転するものではないため、相続によって土地を取得する場合には、分筆登記とは別に相続登記を行う必要があります

相続した土地の分筆と相続登記の一般的な流れ

相続によって土地を相続人ごとに分けて取得する場合は、一般的に次のような流れで手続きを進めます。

1.測量・境界確定
2.分筆登記
3.遺産分割協議
4.相続登記

このように進めることで、分筆後の各土地を取得する相続人名義でそのまま相続登記ができるため、後から持分移転などの登記を行う必要がなく、余分な登記費用や手間を抑えられるメリットがあります。

もっとも、これはあくまでも一般的な流れであり、すべてのケースに当てはまるわけではありません。

例えば、相続登記義務への対応を優先する場合や、境界が未確定で分筆に時間を要する場合などは、先に相続登記を行い、その後に分筆登記を行うこともあります。

どの順序で進めるのが適切かは、遺産分割の内容や土地の状況、売却予定の有無などによって異なるため、土地家屋調査士や司法書士などの専門家へ事前に相談すると安心です。

土地を分筆する費用の目安

土地の分筆にかかる費用は、土地の広さや形状、境界の状況などによって大きく異なり、特に境界が確定しているかどうかによって必要となる作業量が変わるため、一律の金額はありません。

一般的には、土地家屋調査士へ支払う測量費用や分筆登記の報酬が大きな割合を占めており、境界が明確で比較的条件の良い土地であれば数十万円程度で済むこともありますが、隣接地が多い土地や境界確定測量が必要な土地では100万円を超えることもあります

また、状況によっては境界標の設置費用や資料取得費用などが別途必要になるほか、分筆後に相続登記や所有権移転登記を行う場合は、それらの登記費用も必要です。

土地を分筆する際の注意点

境界が確定していない土地は時間がかかる

分筆を行うためには、土地の境界が明確になっていることが前提です。

境界標が見当たらなかったり、隣接地所有者との認識が一致していなかったりする場合は、測量だけでは手続きを進められず、必要に応じて隣接地所有者との立会いや協議を行いながら境界を確定させる必要があるため、分筆完了までに長い時間を要することがあります

また、境界について争いがある場合は解決まで分筆登記ができず、隣接地所有者が遠方に住んでいる場合や相続によって所有者が変わっている場合には、立会いの日程調整だけでも時間がかかることがあります。

相続手続きを急いでいる場合は早めに準備を始めることが重要であり、相続開始後に慌てないためにも、生前のうちから境界の状況を確認しておくと安心です。

分筆すると固定資産税が変わることがある

土地を分筆しても、土地全体の評価額が単純に分割されるとは限らず、分筆後の形状や接道状況、利用状況によっては、それぞれの土地の評価額が変わることがあります。

また、住宅用地の特例などが適用される範囲にも影響するため、分筆後の固定資産税や都市計画税が増減する可能性も考慮しなければなりません。

例えば、一つの住宅敷地として利用していた土地を分筆したことで住宅用地の特例が適用される範囲が変わり、税額が増えるケースもあるため、土地利用の変更を予定している場合は税負担への影響も踏まえて検討することが重要です。

相続税評価額にも影響する場合がある

分筆の方法によっては、相続税評価額が変わることがあります

例えば、分筆後に土地の形状が著しく悪くなったり利用価値が低下したりすると、路線価評価や倍率評価に影響が生じる可能性がある一方で、不整形地を整理するような分筆によって利用価値が高まるケースもあるため、「分筆すれば評価額が下がる」「必ず節税になる」と考えることはできません。

また、土地全体では高い利用価値があっても、分筆後はそれぞれの土地の条件が異なるため評価額に差が生じることもあることから、相続税への影響が見込まれる場合は、土地家屋調査士だけでなく相続税を扱う税理士にも相談しながら進めると安心です。

分筆より適した遺産分割方法もある

土地が相続財産の大部分を占める場合でも、必ず分筆する必要があるわけではありません。

例えば、一人が土地を相続し、他の相続人へ現金を支払う「代償分割」や、土地を売却して売却代金を分ける「換価分割」の方が適しているケースもあります

また、土地を分筆すると利用価値が大きく低下する場合は、あえて分筆せず単独所有とした方が結果として相続人全員の利益につながることもあり、「公平に分けること」と「資産価値を維持すること」は必ずしも一致しません。

土地の形状や相続人の希望、将来の利用方法まで含めて検討した結果、分筆しないという判断が最善となることもあるため、分筆ありきで考えるのではなく、それぞれの遺産分割方法を比較した上で最適な方法を選択することが大切です。

よくある質問

分筆すると土地の住所も変わりますか?

いいえ。

分筆すると新しい地番が付されますが、住居表示を実施している地域では、住所(住居表示)が直ちに変わるわけではありません。

一方、住居表示が実施されていない地域では、地番が住所として使用されているため、分筆によって住所の表記が変わる場合があります。

分筆は自分でもできますか?

土地所有者本人が分筆登記を申請することは可能です。

しかし、分筆には土地の測量や境界確認、図面の作成など専門的な知識と技術が必要となるため、実際には土地家屋調査士へ依頼するのが一般的です。

また、隣接地所有者との境界確認が必要になるケースも多く、専門家へ依頼した方が円滑に手続きを進められるでしょう。

分筆できない土地はありますか?

はい。

法律上、すべての土地が自由に分筆できるわけではありません。

境界が確定していない土地や、法令上の制限によって分筆後の土地が要件を満たさなくなる場合などは、そのままでは分筆できないことがあります。

そのため、分筆を検討する際は、事前に土地家屋調査士へ相談して可否を確認することをおすすめします。

荒川区で相続・遺言のご相談なら【相続・遺言専門】行政書士香川法務事務所へ

土地の分筆は、相続人ごとに土地を分けたり、一部だけを売却したりする際に有効な手続きですが、土地の形状や接道状況、建築に関する法令などによっては、資産価値や将来の利用方法に大きな影響を与えることがあります。

また、分筆は登記だけの問題ではなく、遺産分割の方法や相続税、固定資産税、生前対策などとも密接に関係しています。

そのため、土地を分けられるかどうかだけではなく、「本当に分筆することが最適なのか」という視点で検討することが大切です。

行政書士香川法務事務所では、相続人や相続財産の調査、戸籍収集、遺産分割協議書の作成、公正証書遺言をはじめとした生前対策など、相続・遺言に関する各種手続きをサポートしております。

また、土地の分筆が必要な場合は土地家屋調査士、不動産の相続登記が必要な場合は司法書士、相続税や贈与税の検討が必要な場合は税理士と連携し、ご相談内容に応じたサポートを提供しております。

荒川区で土地の分筆や相続、生前対策についてお悩みの方は、お気軽に【相続・遺言専門】行政書士香川法務事務所までご相談ください。

この記事の執筆者

香川 貴俊
香川 貴俊行政書士香川法務事務所 代表
行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ