不動産を共有名義にするリスク|相続で後悔しないために知っておきたい注意点を徹底解説
相続財産に不動産が含まれている場合、遺産分割ではどのように分けるかが問題になります。
預貯金であれば金額に応じて分けられますが、不動産は簡単に分割できる財産ではないため、遺産分割の方法として共有名義が選ばれることがあります。
共有名義は公平な解決方法に思える一方で、将来を見据えると慎重に検討した方がよい場合もあります。
不動産の共有名義とは
不動産の共有名義とは、一つの土地や建物を複数人で所有している状態をいいます。
例えば、父が亡くなり、長男と次男が実家を2分の1ずつ相続した場合、その不動産は共有名義となり、登記簿には「長男 持分2分の1」「次男 持分2分の1」というように、それぞれの氏名と持分割合が記載されます。
共有名義は相続だけでなく、夫婦で住宅を購入した場合や、親子で購入資金を負担して不動産を取得した場合にも生じます。
共有持分とは
共有持分とは、共有している不動産について、それぞれの共有者が持っている権利のことです。
その権利は割合で表され、例えば2人で均等に共有している場合は、それぞれの持分は2分の1となります。
なお、持分が2分の1であっても、不動産の半分だけを使用できるという意味ではありません。
例えば100㎡の土地を2人で共有している場合でも、東側50㎡が長男、西側50㎡が次男というように区切られているわけではなく、土地全体についてそれぞれが2分の1の権利を持っている、ということになります。
そのため、各共有者は持分割合に応じた部分だけではなく、不動産全体を利用することができます。
ただし、その権利は他の共有者にも認められているため、自分だけの判断で不動産全体を自由に売却したり、建物を建て替えたりすることはできません。
不動産をどのように利用・管理・処分するかについては、他の共有者の権利も関係するため、一人で所有している場合とは大きく異なります。
不動産を共有名義にする6つのリスク
共有名義では、一人の判断だけで不動産を自由に利用したり処分したりすることができません。
現金であれば、相続人ごとに分けた後はそれぞれが自由に管理や処分ができます。
しかし、不動産は共有者全員の権利が関係するため、売却や建替え、賃貸などの活用を進める際には他の共有者との話し合いが必要になります。
また、相続した直後は問題がなくても、年月の経過とともに状況が変わり、不動産を思うように活用できなくなることもあります。
売却を自由にできない
共有名義では、共有不動産全体を第三者へ売却するためには、原則として共有者全員の同意が必要になります。
そのため、兄は売却して現金化したい一方で、弟が親から相続した実家を残したいと希望している場合は、たとえ購入希望者が見つかっても契約できず、売却の機会を逃すことになります。
また、相続した当初は共有者全員が売却に賛成していても、年月の経過とともに生活環境や価値観が変わり、売却について合意できなくなるようなこともあります。
建替えや解体を自由にできない
共有名義では、建物が老朽化したとしても、自分だけの判断で建替えや解体を行うことはできません。
例えば、古くなった実家を建て替えたい場合や、空き家を解体した上で土地を売却する場合、アパートを建築して有効活用したい場合などは、原則として共有者全員の同意が必要になります。
しかし、共有者のうち一人でも反対すれば建替えや解体はできず、老朽化した建物を維持し続けなければなりません。
当然その間も固定資産税や修繕費などの維持管理費は発生し続けるため、不動産を有効活用できないまま負担だけが増えてしまうおそれがあります。

賃貸や活用に制限が生じる
不動産を賃貸に出したり、有効活用したりする場合には、その内容に応じて共有者全員の同意や、持分価格の過半数(人数ではなく持分割合による過半数)の同意が必要となるため、自分一人の判断だけで進めることはできません。
そのため、活用方法について意見が一致しなければ、賃貸収入を得られる可能性があっても、そのまま利用されずに放置されてしまうおそれがあります。
担保として自由に利用できない
共有名義の不動産は、住宅ローンや事業資金の借入れなどのために、不動産全体を担保として利用することも制限されます。
共有不動産全体に抵当権を設定するには、原則として共有者全員の同意が必要となるため、自分一人の判断で担保に提供することはできません。
そのため、不動産を活用して資金調達をしたいと考えても、共有者の同意が得られなければ借入れを進めることが難しくなります。
修繕費や固定資産税の負担で対立する
不動産を所有している限り、固定資産税や火災保険料、修繕費、草刈りや清掃費用などの維持管理費が発生します。
これらの費用は共有者同士の話し合いで負担方法を決めることができますが、実際には一部の共有者だけが負担していることも珍しくなく、「利用している人が負担すべき」「持分割合に応じて負担すべき」など、費用の分担方法について意見が対立することがあります。
当然、一人が支払いを拒否したからといって固定資産税の納税義務がなくなるわけではなく、納期限までに納付しなければ延滞金が発生するため、他の共有者が立て替えざるを得なくなることもあります。
共有者が増えて権利関係が複雑になる
共有名義では、共有者が亡くなると、その持分は相続人へ引き継がれます。
例えば、父が亡くなり、長男と次男が実家を2分の1ずつ相続した後に長男が亡くなると、長男の持分は妻や子どもへ引き継がれ、さらに相続が繰り返されることで共有者は次第に増え、権利関係も複雑になっていきます。
共有者が増えるほど全員の意思をまとめることは難しくなり、不動産を売却したくても同意を得られず、思うように活用できなくなる可能性が高まります。
さらに、年月が経過すると、共有者が転居を繰り返したり、親族間の交流が途絶えたりして、住所や連絡先が分からなくなることもあります。
また、共有者の中に認知症などで判断能力が十分ではない方や未成年者がいる場合には、成年後見制度や特別代理人の選任が必要となり、手続きはより複雑になります。
自分の持分だけなら自由に処分できる?
共有不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要ですが、自分が所有する共有持分であれば、他の共有者の同意を得ることなく売却や贈与をすることができます。
しかし、共有持分だけを処分できたとしても、必ずしも問題が解決するわけではなく、新たなトラブルにつながる可能性もあります。
共有持分だけを購入する人は少ない
共有持分だけを取得しても、不動産全体を自由に利用したり処分したりできるわけではありません。
他にも共有者がいる以上、売却や建替えなどは自由に行えず、不動産を単独で活用することも難しいため、一般の方が共有持分だけを購入するケースは少なく、売却しようとしても買い手が見つかりにくいのが実情です。
共有持分を買い取る専門業者もある
共有持分を専門に買い取る不動産会社や買取業者もあります。
これらの業者は、他の共有者へ持分の買い取りを求めたり、共有物分割請求を行ったりすることで将来的に共有関係を解消できる可能性を見込み、共有持分を買い取るため、一般的な不動産売買よりも低い価格になる傾向があります。
共有持分を第三者へ売却すると、それまで親族だけで共有していた不動産に第三者が加わることになり、不動産の利用や処分についての話し合いが難しくなります。
共有名義の場合に単独でできること・できないこと
共有名義になると、すべての行為について共有者全員の同意が必要になるわけではありません。

単独でできること(保存行為)
各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
(民法252条5項)
共有者は、不動産の現状を維持し、価値を保つための保存行為であれば、他の共有者の同意を得ることなく単独で行うことができます。
例えば、
・建物の雨漏りの応急修理
・不法占拠者に対する明渡請求
・所有権を守るために必要な手続き
などがこれに当たります。
持分価格の過半数で決められること(管理行為)
共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
(民法252条1項)
共有不動産の管理に関する事項は、持分価格の過半数で決めることができます。
例えば、
・建物の通常の修繕
・管理会社の選任
・利用方法に関する一定の事項
などです。
なお、どの行為が管理行為に当たるかは内容によって異なり、令和5年4月1日に施行された改正民法においては、軽微な変更についても持分価格の過半数で決められる場合があります。
共有者全員の同意が必要なこと(変更行為・処分行為)
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
(民法251条1項)
不動産の性質や利用方法を大きく変える変更行為や、共有不動産全体を売却するなどの処分行為については、共有者全員の同意が必要です。
例えば、
・不動産全体の売却
・建物の取り壊し
・大規模な建替え
・土地の用途を大きく変更する行為
などが代表例です。
共有者が一人でも反対すれば、これらの手続きを進めることはできません。
共有名義を避ける方法
共有名義には様々なリスクがあるため、相続ではできるだけ共有状態を作らないことが望ましいといえます。
もちろん、遺産の内容や相続人の意向によっては共有名義を選ばざるを得ない場合もありますが、遺言書の作成や遺産分割協議の進め方を工夫することで、共有名義を避けられるケースもあります。
生前に出来ること。
遺言書を作成しておく
共有名義を避ける方法として、最も有効なのが生前に遺言書を作成しておくことです。
例えば、自宅は長男、預貯金は次男というように取得者を指定しておけば、不動産を共有名義にせず相続させることができます。
また、遺言書があれば遺産分割協議が不要となるケースも多く、相続手続きを円滑に進められる点もメリットです。
ただし、遺留分を侵害する内容となっている場合には、後にトラブルとなる可能性もあるため、相続人の状況や財産全体のバランスを考慮した内容にすることが大切です。
家族信託を活用する
共有名義を避ける方法として、家族信託を活用することも有効です。
家族信託とは、自宅などの財産を信頼できる家族へ託し、その管理や処分を任せる仕組みです。
あらかじめ誰が財産を管理し、将来どのように承継させるかを決めておくことができるため、不動産を共有名義にすることなく、円滑な財産承継を実現しやすくなります。
また、認知症などによって判断能力が低下した場合でも、信託契約の内容に従って受託者が財産を管理・運用できるため、将来の財産管理や承継対策としても有効です。
遺産分割協議でできること
遺言書がない場合でも、遺産分割協議の方法を工夫することで共有名義を避けられることがあります。
現物分割
一人の相続人が不動産を取得する方法です。
共有者がいなければ、売却や賃貸、建替えなども単独で判断して進めることができ、将来の相続で権利関係が複雑になる心配もありません。
ただし、不動産の価値が高い場合には、他の相続人との取得額に差が生じることがあります。
代償分割
不動産を取得した相続人が、他の相続人へ代償金を支払う方法です。
例えば、長男が実家を相続し、その代わりに次男へ現金を支払えば、不動産を共有名義にすることなく、相続人間の公平性を図ることができます。
ただし、代償金を支払うだけの資金が必要になるため、利用できるケースは限られます。
換価分割
相続した不動産を売却し、その売却代金を相続人で分ける方法です。
現金で分けるため共有名義になることはなく、将来にわたって共有者同士が話し合いを続ける必要もありません。
思い出のある実家を手放すことに抵抗を感じる方もいますが、将来のトラブルを防ぐ方法として有力な選択肢の一つです。
共有名義が適しているケースはある?
ここまで共有名義のリスクを紹介してきましたが、すべてのケースで共有名義を避けなければならないわけではありません。
相続人全員の意向や不動産の利用方法によっては共有名義が適していることもありますが、そのようなケースは決して多くなく、将来のリスクも十分に考慮した上で判断することが大切です。
近いうちに売却することが決まっている場合
相続後すぐに売却することが決まっており、共有者全員がその方針に同意しているのであれば、売却までの間は共有名義で相続することが合理的な選択となります。
ただし、売却までの期間が長引けば、その間に共有者の事情や考え方が変わり、当初予定していたとおりに売却できなくなる可能性もあるため、できるだけ早く手続きを進めることが望ましいでしょう。
収益不動産を共同で運営する場合
賃貸アパートや貸店舗など、収益を得ることを目的として複数人で所有・運営するのであれば、共有名義とすることも考えられます。
ただし、管理方法や修繕費の負担、収益の分配方法、将来売却する場合のルールなどを事前に共有者全員で十分に話し合い、できれば書面に残しておかなければ、認識の違いから後々トラブルへ発展するおそれがあります。
荒川区で相続・生前対策のご相談なら【相続・生前対策専門】行政書士香川法務事務所へ
相続では、遺産をできるだけ公平に分けるために不動産を共有名義とすることがありますが、一度共有状態になると、売却や管理、次の相続などをきっかけに思わぬトラブルへ発展することがあります。
行政書士香川法務事務所では、相続人調査のための戸籍収集、相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成、預貯金などの相続手続きサポートを行っており、不動産の相続登記が必要な場合には司法書士、相続税の申告が必要な場合には税理士と連携し、ご相談内容に応じたサポートを提供しております。
荒川区で相続や生前対策についてお悩みの方は、お気軽に行政書士香川法務事務所までご相談ください。

投稿者プロフィール

- 行政書士香川法務事務所 代表
- 行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ
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