寄与分が認められる5つの類型|主張する際の注意点や証拠を解説
相続では、法定相続分を基準として遺産を分けるのが原則です。
ただし、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人がいる場合には、その貢献を相続分へ反映させる「寄与分」という制度が設けられています。
寄与分は相続人同士で争いになりやすい制度ですが、「介護をした」「家業を手伝った」という事情だけで認められるものではなく、法律上の要件を満たしていることや、それを裏付ける客観的な証拠が求められます。
寄与分とは
寄与分とは、相続人の中に被相続人の財産の維持または増加に特別な貢献をした人がいる場合、その貢献度に応じて法定相続分より多く遺産を取得できる制度です。
例えば、長年にわたり無償で家業を手伝い事業の発展に貢献した場合や、本来であれば介護サービスを利用することで多額の費用がかかる状況で、相続人が長期間にわたり介護を続け、その費用負担を軽減した場合などは、寄与分が認められる可能性があります。
寄与分の制度は、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人について、その貢献を相続分へ反映させることで、相続人間の公平を図ることを目的としています。
寄与分は簡単には認められない
寄与分は相続人から主張されることの多い制度ですが、実際に認められるケースは決して多くありません。
最高裁判所が公表している司法統計によると、遺産分割事件のうち、寄与分の定めがあった事件は令和4年が126件、令和5年が135件、令和6年が154件となっており、毎年100件台で推移しています(出典:最高裁判所「令和6年司法統計年報(家事編)」)。
寄与分が容易に認められない理由は、「介護をしていた」「家業を手伝っていた」といった事実だけでは足りず、その行為によって被相続人の財産が維持または増加したことまで証明しなければならないためです。
また、親子であれば日常的な介護や生活の援助を行うことは珍しくないことから、裁判所は通常期待される範囲を超える「特別な寄与」であったかどうかを慎重に判断します。
仕事を辞めて長期間介護に専念していた場合でも、介護の内容や期間、介護サービスを利用した場合との比較などを総合的に検討した結果、寄与分が認められないケースもあります。
そのため、寄与分を主張する際は、「どれだけ苦労したか」を説明するだけではなく、その貢献によって被相続人の財産が維持または増加したことを客観的な証拠によって証明することが重要です。
寄与分が認められる5つの類型
寄与分はどのような貢献でも認められるわけではなく、裁判実務では寄与行為の内容に応じて、主に次の5つの類型に整理されています。
家業従事型
家業従事型とは、被相続人が営んでいた事業を長期間にわたり無償、または著しく低い報酬で手伝い、その結果として財産の維持や増加に貢献した場合です。
農業や漁業、商店、工場、会社経営などで長年働き続けていたケースが代表例ですが、給与を適正に受け取っていた場合は、既に労働の対価を得ていると判断されるため、寄与分は認められにくくなります。
また、短期間手伝った程度では「特別な寄与」と評価されることは難しく、長期間継続していたことも重要な判断要素になります。
金銭等出資型
金銭等出資型とは、相続人が自己資金を提供し、その結果として被相続人の財産形成や財産の維持に貢献した場合です。
自宅購入資金や事業資金を援助した場合のほか、借金を肩代わりしたり、住宅ローンを返済したりしたケースなどが該当します。
もっとも、親子間では金銭のやり取り自体が珍しくないため、それが贈与だったのか、貸付だったのか、それとも財産形成への出資だったのかが争点になることもあります。
そのため、送金記録や契約書など、金銭の性質を示す資料を残しておくことが重要です。
療養看護型
療養看護型は、寄与分の中でも最も多く主張される類型です。
被相続人が病気や要介護状態になった際、相続人が長期間にわたり献身的な介護を行い、その結果として介護施設や介護サービスの利用に必要な費用を抑えられたような場合は、寄与分が認められる可能性があります。
ただし、食事の準備や通院の付き添いなど、一般的な家族であれば通常行う範囲の世話だけでは認められないことが多く、介護の内容や期間、被相続人の要介護度などを踏まえ、「特別な寄与」といえるかどうかが判断されます。
また、介護日誌やケアマネジャーとの記録、要介護認定資料などが重要な証拠となるため、介護をしていた事実だけではなく、その内容まで具体的に証明できるよう準備しておく必要があります。

扶養型
扶養型とは、被相続人の生活費を長期間負担するなど、経済的に支え続けた場合です。
年金だけでは生活できない親へ毎月生活費を送金していた場合や、家賃や医療費などを継続して負担していた場合などが代表例ですが、親族には一定の扶養義務があるため、一時的な援助や少額の仕送りだけでは寄与分が認められることはほとんどありません。
扶養の期間や金額、被相続人の生活状況などを踏まえ、通常期待される扶養義務を超える支援だったかどうかが判断されます。
財産管理型
財産管理型とは、被相続人に代わって財産を管理し、その結果として財産の維持や増加に貢献した場合です。
高齢や病気によって被相続人自身が財産を管理できなくなり、相続人が賃貸物件の管理や家賃の回収、修繕の手配、土地の管理などを長期間行っていたケースが代表例です。
また、株式や投資信託などの資産管理を適切に行い、財産価値の維持に貢献した場合も事情によっては寄与分が認められる可能性があります。
一方で、単に預貯金を管理していた、通帳を預かっていただけという程度では寄与分は認められず、その管理行為によって財産の維持や増加に具体的な効果があったことまで証明する必要があります。
寄与分を主張できる人
寄与分を主張できるのは、原則として相続人に限られます。
そのため、長年にわたり被相続人の介護を続けていたとしても、相続人でなければ寄与分を主張することはできません。
例えば、被相続人の長男の妻が献身的に介護を続けていた場合でも、長男の妻は被相続人の相続人ではないため、寄与分は認められません。
特別寄与料
相続人ではない親族が無償で療養看護などを行っても、寄与分を主張することはできません。
このような不公平を是正するため、平成30年の民法改正により「特別寄与料」という制度が創設されました。
特別寄与料とは、相続人ではない親族が被相続人に対して無償で療養看護その他の労務を提供し、その結果として被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした場合に、相続人へ金銭の支払いを請求できる制度です。
特別受益との違い
寄与分と混同されやすい制度として、「特別受益」があります。
どちらも相続人間の公平を図る制度ですが、寄与分が被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人の相続分を増やす制度であるのに対し、特別受益は、生前贈与や遺贈によって既に多くの利益を受けている相続人の取得分を調整する制度であり、その目的は異なります。
例えば、長年にわたり介護を続けることで被相続人の財産の維持に貢献した場合は寄与分の対象となり、生前に住宅購入資金や事業資金の援助を受けていた場合は特別受益に該当する可能性があります。
相続では、寄与分と特別受益の両方が争点となるケースもあるため、それぞれの制度の違いを理解しておくことが大切です。
寄与分を主張するためには証拠が重要
寄与分が認められるかどうかは、証拠の有無によって大きく左右されます。
「長年介護をしてきた」「家業を手伝ってきた」と口頭で説明するだけでは足りず、その内容や期間、財産への貢献を客観的な資料によって証明しなければなりません。
各類型における主な証拠の例は、次のとおりです。
| 類型 | 主な証拠の例 |
|---|---|
| 家業従事型 | タイムカード、給与明細、確定申告書、業務日報、取引先との契約書・請求書など |
| 金銭等出資型 | 預金通帳、振込記録、契約書、借用書、領収書、返済記録など |
| 療養看護型 | 介護日誌、介護サービス利用記録、ケアマネジャーとの記録、要介護認定資料、診療記録、病院への付き添い記録など |
| 扶養型 | 預金通帳、振込記録、生活費や医療費の領収書、家賃の支払記録、仕送りの記録など |
| 財産管理型 | 賃貸借契約書、家賃の入出金記録、修繕費の領収書、管理委託契約書、帳簿、管理日誌など |
ただし、これらの資料がそろっているだけで寄与分が認められるわけではなく、裁判所は証拠の内容や信用性に加え、その行為が被相続人の財産の維持または増加にどの程度貢献したのかを総合的に判断します。
寄与分を主張する流れ
寄与分を主張する流れ
寄与分は、自動的に認められる制度ではありません。
相続人同士の遺産分割協議から始まり、話し合いで解決できない場合は遺産分割調停、それでも合意に至らない場合は遺産分割審判へと進みます。
遺産分割協議
まずは相続人全員で遺産分割協議を行い、寄与分について話し合います。
相続人全員が寄与分の有無や金額について合意できれば、その内容を遺産分割協議書へ反映し、相続手続きを進めます。
話し合いによる解決は時間や費用の負担を抑えられるため、まずは協議による解決を目指すのが一般的です。
遺産分割調停
遺産分割協議で合意できない場合は、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てます。
調停では、裁判官と調停委員が双方の意見を聞きながら合意による解決を目指すため、当事者同士だけで話し合う場合よりも冷静に協議を進めやすいという特徴があります。
ただし、調停委員が結論を決めるわけではないため、双方の意見が大きく対立している場合は、調停が成立しないこともあります。

遺産分割審判
遺産分割調停でも合意に至らなかった場合は、遺産分割審判へ移行し、裁判所が寄与分の有無や金額を判断します。
審判では、提出された証拠や当事者の主張を踏まえたうえで裁判所が最終的な結論を示し、その判断には原則として従わなければなりません。
そのため、審判まで進むと当事者の希望どおりの結果にならないこともあるため、できる限り遺産分割協議や調停の段階で解決を目指すことが望ましいでしょう。
寄与分は相続の中でも特に争いになりやすく、調停や審判へ発展した場合は専門的な対応が必要になります。
相続人間で対立が生じている場合や、家庭裁判所での手続きが見込まれる場合は、早い段階で相続に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
寄与分に関するよくある質問
寄与分は遺言があっても認められますか?
遺言が作成されている場合でも、寄与分が認められる余地があるケースはあります。
ただし、遺言の内容や相続の状況によって結論は異なるため、一律に判断することはできません。
寄与分はいくら認められますか?
寄与分に上限額や一律の計算方法はありません。
介護や家業への従事の内容や期間、財産への貢献の程度、遺産の内容などを総合的に考慮し、個別の事情に応じて判断されます。
寄与分はいつまで主張できますか?
原則として、相続開始から10年を経過した後に行う遺産分割では、寄与分を主張することはできません。
ただし、相続開始から10年が経過する前に家庭裁判所へ遺産分割の請求をしていた場合など、例外的に寄与分を主張できるケースもあります。
荒川区で相続・遺言のご相談なら【相続・遺言専門】行政書士香川法務事務所へ
寄与分は、相続人であれば当然に認められる制度ではなく、客観的な証拠に基づいて特別な寄与を証明しなければなりません。
また、寄与分を巡る相続では、相続人同士の意見が対立しやすく、遺産分割協議が長期化することも少なくありません。
早い段階で相続関係や相続財産を正確に把握し、客観的な証拠を整理しておくことが、円滑な解決につながります。
行政書士香川法務事務所では、相続人調査のための戸籍収集、相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成、預貯金などの相続手続きサポートを行っており、さらに、不動産の相続登記が必要な場合には司法書士、相続人間で争いが生じている場合には弁護士、相続税の申告が必要な場合には税理士と連携し、ご相談内容に応じたサポートを提供しております。
荒川区で寄与分や相続手続き、遺言についてお悩みの方は、お気軽に行政書士香川法務事務所までご相談ください。

投稿者プロフィール

- 行政書士香川法務事務所 代表
- 行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ
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