相続分の放棄・相続分の譲渡とは?|相続放棄との違いや手続き・注意点を解説
相続が発生した際、相続人は原則として遺産分割協議に参加し、財産の分け方について話し合うことになります。
しかし、状況によっては、相続分を取得しない、あるいは、特定の相続人に持分を集約したい、といった対応が必要となることもあります。
そのような場合に検討されるのが、「相続分の放棄」や「相続分の譲渡」です。
これらは、家庭裁判所で行う相続放棄とは性質が異なるため、それぞれの違いを正しく理解しておくことが重要です。
相続分の放棄とは
相続分の放棄とは、遺産分割協議の中で、自分の相続分を取得しないという意思を示すことをいいます。
これは法律上の制度というよりも、相続人同士の合意に基づいて行われるものであり、相続人としての地位自体が失われるわけではなく、あくまで「財産を受け取らないだけ」という取り扱いになります。
相続分の譲渡とは
相続分の譲渡とは、自分の相続分を他の相続人や第三者に譲ることをいいます。
例えば、特定の相続人に財産を集中させたい場合などに利用されますが、譲渡は契約によって行われるため、譲渡する側と譲渡を受ける側との合意が必要となります。
相続放棄との違い
相続分の放棄・譲渡と、家庭裁判所で行う相続放棄は大きく異なります。
相続放棄をした場合、その人は初めから相続人でなかったものとみなされます。
一方で、
・相続分の放棄
・相続分の譲渡
はいずれも相続人としての地位自体は失われません。
ただし、相続分の放棄や譲渡が有効に成立している場合には、その内容を前提として遺産分割が行われるため、実務上はその後の遺産分割協議に関与しない形で手続きが進められることが一般的です。
相続分がどのように変化するか(具体例)
相続分の放棄の例
相続人がA・B・Cの3人で、それぞれの相続分が3分の1ずつの場合を考えます。
このとき、Aが相続分を放棄すると、Aは財産を取得しません。
その結果、残りの財産はBとCで分けることになり、実質的にはBとCが2分の1ずつ取得する形になります。
相続分の譲渡の例
同じく相続人がA・B・Cの3人の場合に、Aが自分の相続分をBに譲渡したとします。
この場合、BはAの持分を引き継ぐことになるため、
・B:3分の2
・C:3分の1
という形になります。
このように、特定の相続人に持分を集中させることが可能となります。

どのような場合に有効か
相続分の放棄や譲渡は、状況に応じて有効に活用できる手段です。
例えば、遺産分割協議に関与したくない場合には、相続分の放棄によって財産を取得しない意思を明確にすることができます。
また、特定の相続人に財産を集中させたい場合には、相続分の譲渡を行うことで円滑な承継につながります。
相続分の放棄・譲渡の手続き
相続分の放棄
相続分の放棄は、遺産分割協議の中で意思表示を行い、その内容を遺産分割協議書に反映させることで行います。
ただし、口頭での合意では後にトラブルとなる可能性があるため、「相続分放棄証書」として別途書面を作成しておくことが望ましいでしょう。
(参考:さいたま家庭裁判所「相続分放棄証書」)
相続分の譲渡
相続分の譲渡は契約によって行われるため、「相続分譲渡証書」を作成するのが一般的です。
その後、遺産分割協議において、譲渡後の持分を前提として分配を行うので、譲渡の対象や範囲を明確にしておくことが重要です。
(参考:さいたま家庭裁判所「相続分譲渡証書」)
債務は免れない点に注意
相続分の放棄や譲渡を行った場合であっても、相続人としての地位は失われません。
そのため、被相続人に借金などの債務がある場合には、これを免れることはできず、その影響を受ける可能性があります。
この点は、家庭裁判所で行う相続放棄との大きな違いであり、特に注意が必要です。
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相続分の放棄や譲渡は、形式的にはシンプルに見える手続きですが、債務の扱いなど見落としやすいポイントもあります。
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この記事の執筆者

- 行政書士香川法務事務所 代表
- 行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ
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