相続登記は必ずしなければならない?|義務化の内容や罰則、相続したくない場合の対応を解説

相続によって不動産を取得した場合には、相続登記が必要になります。

ただ、親や祖父母が亡くなった後も相続登記が行われていない不動産は現在も多く存在します。

以前は相続登記を行うことを義務付ける法律がなかったこともあり、その結果として所有者不明土地や管理されない空き家が増加し、様々な社会問題が生じるようになりました。

相続登記とは

相続登記とは、相続によって取得した不動産について名義を変更する手続きです。

正式には「所有権移転登記」と呼ばれますが、相続を原因として行う所有権移転登記は一般的に「相続登記」と呼ばれており、相続登記を行うことで登記簿上の所有者を亡くなった方から相続人へ変更することができます

相続登記義務化の背景

以前は相続登記を行うことを義務付ける法律がなかったため、相続登記を行わないまま放置される不動産も数多く存在していました。

所有者不明土地問題

例えば、祖父が亡くなった際に相続登記を行わず、その後に父も亡くなり、さらに子や孫へ相続が発生する、というように相続登記が行われないまま何世代にもわたって放置されると、登記簿上の名義は祖父のままであるにもかかわらず、実際の権利者は多数存在する状態となり、登記簿を見ても現在の所有者が分からなくなることがあります。

このような土地は「所有者不明土地」と呼ばれ、道路整備や河川工事などの公共事業、防災対策、災害復旧などを進める際の大きな障害となっており、その面積は全国で九州本島の面積を上回る規模にまで拡大していると推計されています。

空き家問題との関係

相続登記の未了は、空き家問題とも深く関係しています。

相続した空き家を放置しているうちに相続人が増え、誰が管理するのか分からなくなった結果、修繕や解体が行われないまま老朽化が進み、管理されない空き家が長期間放置されることで、景観悪化や倒壊の危険、防犯上の問題などが全国各地で発生しています。

こうした背景から、所有者不明土地や空き家問題の解消を目的として相続登記の義務化が実施されることになりました。

相続登記義務化の内容

義務化の開始時期

相続登記は2024年4月1日から義務化されています。

そのため、現在では不動産を取得した相続人は原則として相続登記を行わなければなりません

登記期限

相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません

また、遺産分割協議によって不動産を取得した場合には、遺産分割の成立を知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります

義務化前の相続も対象

相続登記の義務化は、2024年4月1日以降に発生した相続だけが対象ではありません。

2024年4月1日より前に発生した相続についても義務化の対象となっており、その時点で相続登記が未了であった不動産については、2024年4月1日から3年以内、つまり2027年3月31日までに相続登記を行う必要があります

そのため、例えば10年前や20年前に発生した相続であっても、現在まで相続登記を行っていない場合には対応しなくてはなりません。

罰則

正当な理由がないにもかかわらず相続登記を行わなかった場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります

過料は刑事罰ではないため前科が付くものではありませんが、法律上の義務違反に対する制裁であることに変わりはなく、これまでのように「時間がある時に手続きすればよい」という考え方は通用しなくなっています。

相続人申告登記

相続人が複数いる場合には、遺産分割協議がすぐにまとまらないこともあります。

しかし、「まだ話し合いが終わっていないから何もしなくてよい」というわけではなく、そのような場合には相続人申告登記という制度を利用できます。

相続人申告登記とは、自分が相続人であることを法務局へ申し出る制度であり、この手続きを行うことで相続登記義務を一時的に履行したものとして扱われます

その後、遺産分割協議が成立した場合には、改めて正式な相続登記を行うことになります。

相続登記を放置するリスク

不動産の売却ができない

相続登記を行っていなければ、不動産を実際に相続していたとしても登記簿上の所有者は亡くなった方のままであるため、原則として売却手続きを進めることはできません

そのため、相続した空き家や土地を売却するためには、まず相続登記を行い、登記簿上の所有者を相続人へ変更する必要があります

数次相続による複雑化

相続登記を放置している間に相続人が亡くなると、新たな相続が発生します。

例えば、祖父が亡くなった際に相続登記を行わないまま父も亡くなった場合には、祖父の相続と父の相続が重なる「数次相続」の状態となり、当初は数名だった相続人がさらに増加することになります。

相続登記を長期間放置していると、このような数次相続が繰り返し発生し、収集しなければならない戸籍の範囲が広がるだけではなく、遺産分割協議に参加する相続人も増加するため、手続きは大幅に複雑になります。

実際には、相続人が十数人から数十人にまで増加し、連絡先の調査だけでも大変な労力を要する事例もあります。

相続登記にかかる費用

登録免許税

相続登記を行う際には、登録免許税が発生します。

登録免許税は不動産の固定資産税評価額に0.4%を乗じて計算されるため、例えば固定資産税評価額が1,000万円の不動産であれば登録免許税は4万円となります。

そのため、不動産の評価額が高いほど登録免許税も高額になります。

専門家報酬

相続登記を司法書士へ依頼する場合には、登録免許税とは別に司法書士報酬が必要となり、報酬額は事務所や案件の内容によって異なりますが、一般的な相続登記であれば5万円から15万円程度が一つの目安となります。

ただし、相続人が多い場合や昔の相続が未了になっている場合、相続する不動産が複数ある場合などには、戸籍収集や相続関係の調査、書類作成に多くの時間を要するため、報酬額が高くなることがあります。

そのため、相続登記を行う際には登録免許税だけではなく、専門家へ依頼する場合の費用も含めて検討する必要があります。

相続登記に必要な書類と申請先

必要書類

相続登記では、一般的に次のような書類が必要になります。

登記申請書
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
相続人全員の現在の戸籍謄本
不動産を取得する相続人の住民票
固定資産評価証明書
遺言書(検認済みの自筆証書遺言、または公正証書遺言・法務局保管制度を利用した自筆証書遺言など検認不要のもの)※1
遺産分割協議書および相続人全員の印鑑証明書 ※2

※1 遺言書によって不動産を取得する場合

※2 遺産分割協議によって不動産を取得する場合

必要書類は相続の状況によって異なるため、事前に確認しておくことが望ましいです。

申請先

相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局へ申請します。

なお、相続人の住所地を管轄する法務局ではなく、不動産所在地を管轄する法務局へ申請する必要があるため注意が必要です。

また、近年は窓口への持参だけではなく、郵送やオンラインによる申請も利用できるようになっています。


相続したくない場合の対応

相続放棄

相続放棄の概要

不動産を含めて相続そのものを希望しない場合には、相続放棄を検討することになります。

相続放棄が認められると、初めから相続人ではなかったものとして扱われるため、不動産を取得することもなく、相続登記義務も発生しません。

また、不動産だけではなく、借金や未払金などのマイナスの財産についても一切相続しないことになるため、管理が困難な空き家や山林、農地を抱えている場合や、多額の債務が存在する場合には有力な選択肢となります。

相続放棄の期限

相続放棄はいつでもできるわけではなく、原則として自分が相続人であることを知った日から3か月以内家庭裁判所へ申述する必要があります。

期限を過ぎると相続放棄が認められなくなる可能性があるため、不動産を相続したくないと考えている場合には早めに財産状況を確認し、必要に応じて専門家へ相談するようにしましょう。

一部の財産だけ放棄することはできない

相続放棄は相続財産の一部だけを放棄する制度ではありません

例えば、預貯金は相続したいが空き家はいらない、自宅は相続したいが山林は相続したくない、といった選択はできず、相続放棄を行う場合にはプラスの財産もマイナスの財産も含めて全ての相続権を放棄することになります。

相続土地国庫帰属制度

制度の概要

相続によって取得した土地については、一定の要件を満たす場合に国へ引き取ってもらえる相続土地国庫帰属制度が設けられており、相続放棄はしたくないが不要な土地だけ手放したいという場合には選択肢の一つとなります。

ただし、どのような土地でも引き取ってもらえる制度ではなく、法務大臣の承認を受ける必要があるため、利用にあたっては後述する一定の要件を満たさなければなりません。

利用できない土地

相続土地国庫帰属制度は便利な制度ではありますが、どのような土地でも利用できるわけではありません。

例えば、

建物が存在する土地
・担保権や使用収益権が設定されている土地
・他人による利用が予定されている土地
・土壌汚染がある土地
・境界が明らかでない土地や所有権について争いがある土地

などは承認の対象外となります。

また、これらに該当しない土地であっても、

崖があり通常の管理や処分をするために過大な費用や労力が必要な土地
・管理や処分を阻害する工作物や車両、樹木などが存在する土地
・除去しなければならない埋設物がある土地

などについては、承認されない場合があります。

そのため、相続土地国庫帰属制度の利用を検討する際には、自身の土地が要件を満たしているか事前に確認することが重要です。

費用負担

相続土地国庫帰属制度を利用する際には、申請時に審査手数料(土地一筆あたり14,000円)を納付する必要があります。

また、承認された場合には土地管理費相当額として負担金を納付しなければならず、その額は原則として20万円ですが、土地の種類や面積によっては20万円を超える場合もあり、例えば市街地の宅地や農地、森林などについては個別の計算方法によって負担金額が決定されます。

このように、相続土地国庫帰属制度は不要な土地を無料で国が引き取ってくれる制度ではなく、一定の費用負担が発生するうえ、申請を行ったとしても必ず承認されるわけではないため、事前に要件や費用を十分確認したうえで利用を検討することが大切です。

荒川区の相続・遺言は【相続・遺言専門】行政書士香川法務事務所へ

相続登記を行うためには、戸籍収集による相続人調査や遺産分割協議書の作成など、様々な準備が必要になります。

行政書士香川法務事務所では、相続人調査のための戸籍収集、相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成、預貯金等の相続手続きサポートなど、相続に関するご相談を承っており、不動産の相続登記が必要な場合には司法書士、相続税申告が必要な場合には税理士と連携しながら対応しております。

荒川区で相続や遺言に関するお悩みがございましたら、お気軽に行政書士香川法務事務所へご相談ください。

投稿者プロフィール

香川 貴俊
香川 貴俊行政書士香川法務事務所 代表
行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ