戸籍の広域交付制度とは?|相続で取得できる戸籍・請求できる人・注意点を解説
相続手続では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を収集し、誰が法定相続人になるのかを確認する必要がありますが、転籍や婚姻などによって本籍地が変わっている場合、従来はそれぞれの市区町村へ戸籍を請求しなければなりませんでした。
しかし、令和6年3月1日に戸籍証明書等の広域交付が始まり、本籍地以外の市区町村の窓口でも、本人や配偶者、直系親族の戸籍証明書等をまとめて請求できるようになりました。
戸籍の広域交付制度とは
戸籍証明書等の広域交付とは、本籍地ではない市区町村の窓口から、戸籍証明書や除籍証明書を請求できる制度です。
たとえば、荒川区に住んでいて本籍地が北海道にある場合、従来は北海道の市区町村へ郵送などで戸籍を請求する必要がありましたが、広域交付を利用すれば、荒川区役所の窓口で取得できます。
さらに、亡くなった方が転籍や婚姻を繰り返し、必要な戸籍の本籍地が複数の市区町村に分かれている場合でも、1か所の窓口からまとめて請求できるため、相続に伴う戸籍収集の負担を減らすことができるようになりました。

広域交付の根拠は戸籍法第120条の2に定められており、本籍地の市区町村長以外の指定市町村長に対しても戸籍証明書等を請求できます。
第百二十条の二
戸籍法第120条の2第1項第1号
第百十九条の規定により戸籍又は除かれた戸籍が磁気ディスクをもつて調製されているときは、次の各号に掲げる請求は、当該各号に定める者に対してもすることができる。
一 第十条第一項(第十二条の二において準用する場合を含む。次項及び次条(第三項を除く。)において同じ。)の請求
指定市町村長(第百十八条第一項の規定による指定を受けている市町村長をいう。以下同じ。)のうちいずれかの者
参考:法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」
従来の戸籍請求との違い
従来の請求方法では、本籍地の市区町村の窓口へ出向くか、郵送または自治体のオンライン申請を利用する必要があり、本籍地が複数ある場合には、それぞれの自治体に対して個別に手続を行う必要がありました。
これに対し、広域交付では本籍地以外の市区町村の窓口から複数の自治体の戸籍をまとめて請求できるようになりました。
ただし、利用できる人や取得できる証明書の種類が限られており、郵送や代理人による請求は認められていません。
| 比較項目 | 本籍地への請求 | 広域交付 |
|---|---|---|
| 請求先 | 本籍地の市区町村 | 本籍地以外の市区町村窓口 |
| 窓口請求 | 可能 | 可能 |
| 郵送請求 | 可能 | 不可 |
| 代理人による請求 | 委任状等により可能 | 不可 |
| 第三者請求・職務上請求 | 要件を満たせば可能 | 不可 |
| 戸籍抄本等の取得 | 可能 | 不可 |
広域交付で取得できる戸籍
広域交付の対象となるのは、戸籍全部事項証明書、除籍全部事項証明書、除籍謄本および改製原戸籍謄本ですが、コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は対象外です。
| 証明書の種類 | 内容 | 荒川区での手数料 |
|---|---|---|
| 戸籍全部事項証明書 | 現在の戸籍に記載された全員の証明 | 1通450円 |
| 除籍全部事項証明書 | 全員が除籍されたコンピュータ化後の戸籍の証明 | 1通750円 |
| 除籍謄本(改製原戸籍を含む) | 全員が除籍された戸籍や法改正前の戸籍の証明 | 1通750円 |
出生から死亡までの戸籍もまとめて請求できる
相続手続では、婚姻歴や離婚歴、養子縁組、子の有無などを確認して法定相続人を確定するため、亡くなった方の死亡時の戸籍に記載された従前の本籍地を手がかりに一つ前の戸籍へさかのぼり、出生後最初に作られた戸籍まで連続したすべての戸籍を収集しなければならず、従来は、本籍地が複数の市区町村に分かれている場合、それぞれの市区町村へ戸籍を請求する必要がありました。
しかし、広域交付を利用すれば、1か所の窓口で出生から死亡までの戸籍をまとめて請求できるようになり、相続に伴う戸籍収集の負担が軽減されました。
出生から死亡までの戸籍を広域交付でまとめて請求する場合には、窓口でその旨を伝えることで、担当者が戸籍のつながりを確認しながら該当する戸籍を探してくれる場合もありますが、自治体や戸籍の内容によって取扱いが異なる可能性があるため、利用を予定している市区町村へ事前に問い合わせておくと安心です。
広域交付では取得できない証明書
戸籍抄本・個人事項証明書・一部事項証明書
広域交付では、戸籍に記載された一部の人だけを証明する戸籍抄本や個人事項証明書、特定の事項だけを証明する一部事項証明書は取得できず、必要な場合には本籍地の市区町村へ請求する必要があります。
戸籍の附票
戸籍の附票は、戸籍が作られてから現在までの住所の履歴を記録した書類ですが、戸籍証明書等の広域交付には含まれないため、本籍地の市区町村へ請求しなければなりません。
コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍
戸籍に使用できない文字が記載されているなどの事情によってコンピュータ化されていない戸籍や除籍は、全国の戸籍情報を連携するシステムから確認できないため、広域交付の対象外となります。
そのため、相続に必要な戸籍の一部だけを広域交付で取得できない場合には、その戸籍の本籍地を管轄する市区町村へ別途請求する必要があります。
身分証明書・独身証明書など
身分証明書、独身証明書、受理証明書なども広域交付の対象ではなく、証明書ごとに定められた市区町村へ請求する必要があります。
広域交付を利用できる人
広域交付を利用できるのは、戸籍に記載されている本人、その配偶者、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属です。
第十条
戸籍法第10条第1項
戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされたものであつて、当該記載が第二十四条第二項の規定によつて訂正された場合におけるその者を除く。)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができる。
兄弟姉妹や甥・姪の戸籍は広域交付で取得できない
兄弟姉妹は傍系親族であり、広域交付の対象となる直系尊属または直系卑属には当たらないため、請求者から見て兄弟姉妹や甥・姪にあたる人の戸籍は、広域交付で取得できません。
この制限は、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合の戸籍収集に大きく影響します。
亡くなった方に子がおらず、父母などの直系尊属もすでに亡くなっている場合には、父母の出生から死亡までの戸籍をたどり、兄弟姉妹全員を確認する必要があります。
さらに、先に亡くなっている兄弟姉妹がいる場合には、その子である甥・姪へつながる戸籍も収集しなければなりません。
このように、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合には多くの戸籍を収集する必要がありますが、広域交付で取得できない戸籍については、それぞれの本籍地の市区町村へ請求しなければならないため、戸籍収集の負担が大きくなります。
広域交付の利用方法
広域交付を利用する場合には、請求する本人が市区町村の戸籍担当窓口へ出向き、請求書と官公署が発行した顔写真付きの本人確認書類を提出します。
- 取得する戸籍の本籍と筆頭者を確認する
- 顔写真付き本人確認書類を用意する
- 利用する市区町村の受付場所と受付時間を確認する
- 本人が窓口へ出向いて請求書を提出する
本人確認書類には、運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどを使用できますが、健康保険証のように顔写真のない書類だけでは請求できません。

郵送や代理人による請求はできない
広域交付は窓口での本人請求に限られるため、郵送では利用できず、家族や行政書士などへ委任して代理で請求することもできません。
交付まで時間がかかる場合がある
本籍地以外の戸籍を交付する際には、請求を受けた市区町村が戸籍の内容を確認するため、通常の戸籍請求より時間がかかる場合があります。
請求する戸籍の数や内容によっては当日に受け取ることができず、後日あらためて窓口へ出向かなくてはならない可能性もあります。
相続手続で広域交付を利用する場合には、時間に余裕を持って請求しましょう。
荒川区で広域交付を利用する場合
荒川区では、区役所1階の戸籍住民課3番窓口で広域交付を受け付けており、受付時間は祝日、年末年始を除く月曜日から金曜日の午前8時30分から午後4時30分までです。
ただし、水曜日の窓口延長と日曜開庁では受け付けておらず、南千住、町屋、尾久、日暮里の各区民事務所でも利用できないため、広域交付を希望する場合には受付時間内に荒川区役所へ出向かなくてはなりません。
請求書には、必要な戸籍の本籍と筆頭者を記入する必要があるので、分からない場合には本籍と筆頭者を記載した住民票を住所地の市区町村で取得するなどして、事前に確認しておきましょう。

なお、請求する戸籍の数や内容によっては、交付までに長時間を要し当日中に受け取れない可能性があるため、時間に余裕を持って予定を組んでおくとよいでしょう。
戸籍の広域交付に関するよくある質問
住所地以外の市区町村でも請求できますか
広域交付は住所地に限らず、勤務先の近くなど、全国の対応する市区町村窓口で請求できますが、受付場所や時間は自治体によって異なるため、来庁前に請求先の案内を確認してください。
行政書士に代理で広域交付を利用してもらえますか
広域交付は請求できる本人が窓口へ出向く必要があり、行政書士を含む代理人や職務上請求では利用できませんが、行政書士は本籍地の市区町村へ戸籍を請求し、相続に必要な戸籍を収集できます。
マイナンバーカードがなければ利用できませんか
マイナンバーカードがなくても、運転免許証やパスポートなど、官公署が発行した顔写真付き本人確認書類を提示すれば利用できます。
広域交付で戸籍の附票も取得できますか
戸籍の附票は広域交付の対象ではないため、本籍地の市区町村へ窓口、郵送または利用可能なオンライン申請で請求する必要があります。
荒川区の相続・遺言は【相続・遺言専門】行政書士香川法務事務所へ
相続手続では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を収集し、誰が法定相続人になるのかを確定する必要がありますが、広域交付を利用すれば、複数の市区町村に分かれている戸籍を1か所の窓口からまとめて請求できます。
ただし、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合には、広域交付では取得できない戸籍が含まれるため、必要な戸籍の範囲を確認したうえで、それぞれの本籍地の市区町村へ請求しなければなりません。
行政書士香川法務事務所では、相続手続に必要な戸籍収集や相続人調査をはじめ、相続関係説明図や遺産分割協議書の作成、預貯金の解約・払戻しなどを一貫して承っており、不動産の相続登記や相続税の申告が必要な場合には、司法書士や税理士と連携して対応いたします。
荒川区で相続手続に必要な戸籍の収集にお悩みの方は、お気軽に【相続・遺言専門】行政書士香川法務事務所へご相談ください。

この記事の執筆者

- 行政書士香川法務事務所 代表
- 行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ










