空き家を相続した場合の注意点は?|放置リスクや対処方法を解説

子どもがすでに親元を離れて生活している状況で、親が高齢者施設へ入所、あるいは亡くなって相続が発生、といったタイミングで実家が空き家になるケースが近年増えています。

今すぐ使う予定がないからといってそのまま空き家を放置してしまうと、固定資産税や維持費の負担だけでなく、建物の老朽化や近隣トラブルにつながります。

また、空き家は放置期間が長くなるほど管理負担や売却難易度が上がりやすく、相続人同士の話し合いもまとまりにくくなるというリスクもあります。

目次
  1. 空き家を相続したらまず行うこと
  2. 空き家を放置するリスク
  3. 特定空家・管理不全空家に指定されるリスク
  4. 空き家を相続した場合の主な対処方法
  5. 空き家を相続放棄できる?
  6. 相続した空き家を売却する場合の特例
  7. 相続土地国庫帰属制度は利用できる?
  8. 空き家問題を防ぐために生前からできる対策
  9. 荒川区の相続・遺言のご相談なら【相続・生前対策専門】行政書士香川法務事務所へ

空き家を相続したらまず行うこと

相続人を確定する

まず最初に、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍を収集します。

そして、収集した戸籍を読み解きながら、誰が相続人になるのかを確認していきます。

なお、本来相続人となるべき人が、被相続人よりも先に亡くなっている場合には、その人の死亡を確認するための戸籍も必要になります。

配偶者と子が相続人になるケース

配偶者と子が相続人になるケースです。

この場合には、被相続人の出生から死亡までの戸籍に加え、

配偶者の現在戸籍
子の現在戸籍

を収集していきます。

もっとも、配偶者や子の戸籍については、被相続人の出生から死亡までの連続戸籍の中に現在事項まで記載されているケースも多く、その場合には別途現在戸籍の取得は不要になります。

また、子がすでに亡くなっている場合には、代襲相続の確認のため、さらに子の出生から死亡までの戸籍や、孫の現在戸籍なども必要になります。

配偶者と親が相続人になるケース

子供がいない場合には、父母などの直系尊属が相続人になります。

たとえば、

・配偶者
・父
・母

といったケースです。

この場合には、被相続人の出生から死亡までの戸籍配偶者の現在戸籍に加え、

父母の現在戸籍

なども収集していきます。

また、父母がすでに亡くなっていて、祖父母が存命の場合には、祖父母の戸籍確認も必要になります。

配偶者と兄弟姉妹が相続人になるケース

子供もおらず、父母や祖父母もすでに亡くなっている場合には、兄弟姉妹が相続人になります。

このケースでは、被相続人の出生から死亡までの戸籍配偶者の現在戸籍に加え、

父母の出生から死亡までの戸籍
兄弟姉妹の現在戸籍

など、多数の戸籍が必要になります。

さらに、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、

亡くなった兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍
甥姪の現在戸籍

なども必要になるため、非常に複雑になります。

遺言書の有無を確認する

遺言書がある場合には、基本的にはその内容に従って手続きを進めることになります。

公正証書遺言の確認方法

公正証書遺言は、公証役場で作成・保管される遺言書です。

そのため、遺族が遺言書の存在を把握していない場合でも、「遺言検索システム」を利用することで、公正証書遺言の有無を確認できます。

公正証書遺言が見つかった場合には、そのまま金融機関へ提出して相続手続きを進めることができます(後述する「検認」は不要です)。

自筆証書遺言の確認方法

自筆証書遺言は、自宅保管されているケースも多く、まずは自宅内や貸金庫などを確認していくことになります。

なお、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用していた場合には、法務局で遺言書保管の有無を確認することができます。

自宅などから自筆証書遺言が見つかった場合には、原則として家庭裁判所で「検認」(※遺言書の状態を確認し保存するための家庭裁判所手続き)が必要になります。

一方、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合には、検認は不要です。

相続登記(名義変更)を行う

相続によって空き家を取得した場合には、不動産の名義を亡くなった方から相続人へ変更する「相続登記」を行います。

相続登記を行うためには、一般的に、

・被相続人の戸籍謄本等
・被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票
・相続人全員の戸籍謄本
・不動産を相続する人の住民票
・固定資産評価証明書
・遺言書(検認済みのもの)もしくは遺産分割協議書および印鑑証明書

などの書類が必要になります。

なお、2024年4月1日から相続登記が義務化されました

これにより、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行わなければならず、正当な理由なく義務を怠った場合には10万円以下の過料が科される可能性があります

また、空き家の場合には、

・誰も住む予定がない
・すぐに売却する予定もない

といった理由から名義変更が後回しにされがちです。

しかし、相続登記を行わないまま放置すると、その間に新たな相続が発生し、権利関係が複雑化するおそれがあります。

たとえば、父名義のまま放置している間に母も亡くなった場合には一次相続と二次相続の両方について検討しなければならず、さらに相続人の一人が亡くなると、その子や孫、場合によっては甥姪まで関係者が増え、遺産分割協議が難航するおそれがありるため、空き家を相続した場合には早めに相続登記を済ませておくことが重要です。

空き家を放置するリスク

固定資産税や維持費がかかり続ける

空き家であっても、不動産を所有している以上、固定資産税が発生します。

また、

・水道光熱費
・火災保険料
・草木の管理費用
・修繕費

などの費用も継続的に発生する可能性があるため、利用予定がないにもかかわらず維持費だけを負担し続けることになります。

建物の老朽化が進む

人が住まなくなった建物は想像以上に早く傷みやすく、

・換気不足によるカビ
・雨漏り
・シロアリ被害
・配管の劣化

などが発生しやすくなります。

また、定期的な管理が行われていない建物は売却時の評価も下がりやすく、放置期間が長くなるほど修繕費用も大きくなります。

近隣トラブルや損害賠償のリスクがある

空き家を放置すると、

・雑草が隣地へ越境する
・害虫や害獣が発生する
・不法侵入される
・ゴミを不法投棄される

などの問題が発生しやすくなります。

さらに、

・建物の倒壊
・屋根材の飛散
・外壁の落下

などによって第三者へ損害を与えた場合には、所有者が損害賠償責任を負う可能性もあります。

売却しにくくなる

空き家は放置期間が長くなるほど売却しにくくなります。

特に、

・地域の人口減少
・需要の低下
・建物の老朽化

などが重なると買い手が見つかりにくくなります。

また、建物の状態によっては解体前提でしか売却できなくなることもあります。

特定空家・管理不全空家に指定されるリスク

特定空家とは

適切に管理されていない空き家は、

・倒壊のおそれがある
・衛生上有害となるおそれがある
・著しく景観を損なっている

などの状態になると「特定空家」に指定されることがあり、自治体から助言や指導、勧告などが行われ、それでも改善されない場合には行政代執行へ進む可能性があります。

管理不全空家とは

2023年の法改正により新設された「管理不全空家」は、現時点では特定空家ほど危険ではないものの、このまま放置すると問題化するおそれがある空き家を対象とするもので、従来よりも早い段階で行政指導の対象になります。

固定資産税の優遇措置が受けられなくなる可能性

住宅用地には固定資産税の軽減特例がありますが、特定空家等として勧告を受けると特例の適用が受けられなくなり、固定資産税の負担が大きく増加する可能性があります最大6倍)。

空き家を相続した場合の主な対処方法

売却する

利用予定がない場合には、売却を検討することになります。

特に、

・遠方に住んでいる
・管理が難しい
・今後も利用予定がない

という場合には、早めに売却した方が管理負担や維持費の負担を抑えやすく、建物の老朽化による資産価値の低下も防ぎやすくなります。

空き家専門の買取業者へ売却する

早期売却を希望する場合や、老朽化が進んでいて一般の買主が見つかりにくい場合には、空き家専門の買取業者へ売却する方法もあります。

買取の場合は、不動産会社が直接買い取るため、仲介による売却と比べて短期間で売却しやすいというメリットがあります。

また、

・建物の老朽化が進んでいる
・地方にあり需要が少ない
・残置物が残っている

といった物件でも対応してもらえる可能性があります。

ただし、一般的には仲介による売却よりも売却価格が低くなる傾向がありますので、複数の選択肢を比較しながら検討することが重要です。

賃貸として活用する

立地によっては、賃貸物件として活用することも可能です。

ただし、築年数が古い建物では修繕費やリフォーム費用、管理負担などが発生するほか、空室リスクもあるため、収益化できるか十分に検討する必要があります。

自分や親族が利用する

将来的に自分や親族が居住する予定がある場合には、そのまま保有する選択肢もあります。

ただし、利用予定が曖昧なまま長期間放置すると建物の傷みが進みやすいため、定期的な管理が必要です。

解体して土地として活用する

建物の老朽化が進んでいる場合には、解体して土地として活用する方法もあります。

更地にすることで売却しやすくなる上に、土地の状況によっては駐車場として活用することも可能です。

ただし、建物を解体すると固定資産税の軽減特例が受けられなくなる可能性があるので、解体後の活用方法や税負担も踏まえたうえで検討する必要があります。

空き家を相続放棄できる?

空き家だけを相続放棄することはできない

相続放棄は特定の財産だけを対象に行うことはできません

そのため、空き家だけを放棄して預貯金などのプラス財産だけを相続するといったことはできず、相続放棄をするとすべての相続権を放棄することになります。

相続放棄を検討する際には、空き家以外の財産状況や借金の有無も含めて判断することが重要です。

相続放棄しても管理責任が残る場合がある

相続放棄をした場合でも、既に空き家を占有している場合現実に管理している状態にある場合には、状況によって一定期間管理責任が残る可能性があります

そのため、相続放棄を検討している場合には、できるだけ早い段階で手続方針を決めることが重要です。

相続した空き家を売却する場合の特例

被相続人居住用家屋の3,000万円特別控除

一定要件を満たす場合には、相続した空き家を売却した際の譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「被相続人居住用家屋の3,000万円特別控除」を利用でき、税負担を大きく軽減できる可能性があります。

利用できる主な要件

被相続人居住用家屋の3,000万円特別控除を利用するためには、主に次のような要件を満たす必要があります。

・被相続人が亡くなる直前まで一人で居住していたこと
・昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
・区分所有建物(マンション等)ではないこと
・相続開始から売却まで事業用や賃貸用として利用していないこと
・相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
・売却代金が1億円以下であること

また、建物をそのまま売却する場合には耐震基準への適合が必要となるほか、建物を解体して更地として売却する方法が選択されることもあります。

適用を受ける際の注意点

この特例は細かな要件が多く分かりにくいため、売却を検討している場合には早めに税理士などの専門家へ相談した方が良いでしょう。

相続土地国庫帰属制度は利用できる?

制度の概要

相続によって取得した不要な土地については、一定要件を満たすことで国へ引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」という制度があります。

主な利用要件

相続土地国庫帰属制度を利用するためには、相続または遺贈によって取得した土地であることが前提になります。

また、

・建物が存在しないこと
・担保権などが設定されていないこと
・境界が明らかであること
・所有権について争いがないこと

などの要件も満たさなければなりません。

申請後は法務局による審査が行われ、要件を満たしていると認められた場合に限り国へ帰属させることができます。

負担金が必要になる

この制度を利用するためには、

・審査手数料
10年分相当の土地管理費用を基準とした負担金

などが必要となり、不要な土地を無料で国へ渡せる制度ではありません

空き家問題を防ぐために生前からできる対策

遺言書を作成しておく

空き家の相続では、誰が不動産を取得するのか決まらなかったり、相続人同士の意見が対立したりする可能性が高いため、生前のうちに遺言書を作成し、不動産の承継先を明確にしておくことが重要です。

将来の利用方法を家族で話し合う

空き家問題は誰も使う予定がないまま結論だけが先送りされることで深刻化しやすいため、誰が住むのか、売却するのか、賃貸にするのかなどを生前から家族で話し合っておくことが重要です。

生前のうちに売却を検討する

既に利用予定がない不動産については、生前のうちに売却を検討することで所有者本人が元気なうちに手続きを進めることができ、相続後の家族の負担軽減にもつながります。

荒川区の相続・遺言のご相談なら【相続・生前対策専門】行政書士香川法務事務所へ

空き家を相続した場合には、相続人の確定や遺産分割協議、相続登記の準備だけでなく、その不動産を売却するのか、保有し続けるのか、あるいは活用するのかといった判断も必要になります。

また、相続人同士で意見がまとまらないまま時間が経過すると、建物の老朽化や維持費の負担が増え、さらに手続きが複雑になることもあります。

行政書士香川法務事務所では、遺言書作成、戸籍収集、遺産分割協議書作成、預貯金や不動産の名義変更など、相続手続きを幅広くサポートしており、必要に応じて司法書士や税理士など他士業とも連携しながら対応しております。

荒川区で相続や遺言についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

香川 貴俊
香川 貴俊行政書士香川法務事務所 代表
行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ