相続手続は行政書士にどこまで依頼できる?|司法書士・税理士・弁護士との違いを解説

相続が発生すると、戸籍の収集、相続財産の調査、遺産分割協議書の作成、預貯金の解約、不動産の名義変更、相続税の申告など、さまざまな手続が必要になります。

こうした相続手続を専門家へ任せたいと考えた際に、行政書士、司法書士、税理士、弁護士のうち、誰に相談すればよいのか分からないという方も多いのではないでしょうか?

専門家が対応できる範囲は法律によって定められています。
本記事では一般的な業務範囲を解説していますが、個別の事情によって適切な相談先が異なる場合があります。

行政書士が相続手続を扱える根拠

行政書士が取り扱う業務は、行政書士法に定められています。

(業務)
第一条の三 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

この規定により、相続関係説明図、財産目録、遺産分割協議書などは、事実証明や権利義務に関する書類に該当するため、行政書士が作成できます

ただし、行政書士が作成できる書類には限界があり、同条第2項にあるとおり、他の法律によって司法書士、税理士、弁護士などの業務と定められているものは、行政書士が行うことはできません

(参考:行政書士法-e-Gov法令検索

行政書士に依頼できる主な相続手続

行政書士に依頼できる主な相続手続は、次のとおりです。

手続主な内容
相続人調査戸籍を収集し、法定相続人を確定する
相続財産調査預貯金、不動産、有価証券、負債などを調べる
相続関係説明図の作成被相続人と相続人の関係を図で表す
法定相続情報一覧図の作成法務局へ提出する一覧図と申出書類を作成する
財産目録の作成判明した相続財産を一覧にまとめる
遺産分割協議書の作成相続人全員が合意した分割内容を書面にする
預貯金の相続手続口座の解約、払戻し、名義変更などを進める
有価証券・自動車などの名義変更各機関の必要書類を準備し、手続を行う
遺言執行遺言内容に沿って財産の承継手続を進める

戸籍収集と相続人調査

相続手続では、まず被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を収集し、婚姻歴、離婚歴、子の有無などを確認したうえで、誰が法定相続人になるのかを確定します。

そして、法定相続人が誰になるかによって収集しなければならない戸籍の範囲も変わりますが、特に兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合には、被相続人の戸籍だけでなく、その父母や亡くなっている兄弟姉妹の戸籍もたどる必要があるため、取得する戸籍が数十通に及ぶ場合もあります。

このように、相続関係が複雑になるほど、必要な戸籍の範囲を判断して漏れなく収集する負担も大きくなりますが、行政書士へ依頼すれば、必要な戸籍の判断から各市区町村への請求、法定相続人の確定まで任せることができます

相続財産調査と財産目録の作成

遺産分割を始める前に、被相続人がどのような財産を所有していたのかを確認するため、預貯金、不動産、有価証券、自動車、生命保険、借金などを調査し、判明した財産を財産目録に記載する必要があります。

相続財産の種類が多い場合には、相続人だけですべてを調査して正確に把握することが難しくなりますが、行政書士へ依頼すれば、金融機関への残高証明書や取引履歴の請求、登記事項証明書や名寄帳の取得など、財産の調査から財産目録の作成まで任せることができます

相続関係説明図・法定相続情報一覧図の作成

相続関係説明図とは、被相続人と相続人の関係を家系図のような形式で表した書類です。

これに対し、法定相続情報一覧図は、戸籍の内容に基づいて法定相続関係を一覧にした図であり、戸籍一式や申出書などとともに法務局へ提出して、内容の確認を受けます。

法務局から交付された法定相続情報一覧図の写しは、銀行の相続手続や相続登記などで戸籍一式に代えて利用できるため、複数枚取得しておけば、戸籍一式を各窓口へ繰り返し提出する必要がなくなり、複数の手続を並行して進めやすくなります。

法定相続情報一覧図の見本

(引用:「法定相続情報証明制度」について - 法務局 - 法務省

遺産分割協議書の作成

遺言書がなく、相続人が複数いる場合には、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、話し合いがまとまったら、その内容に基づいて遺産分割協議書を作成します。

その際、行政書士は、相続人全員の合意内容を確認し、不動産、預貯金、有価証券などの財産を特定したうえで、各種の名義変更に使用できる遺産分割協議書を作成できます

ただし、行政書士が関与できるのは相続人全員の合意が成立している場合であり、特定の相続人の代理人となって他の相続人と交渉したり、対立している当事者間の利害を調整したりすることはできません

遺産分割協議書と印鑑登録証明書

預貯金・有価証券・自動車などの相続手続

遺産分割協議がまとまった後は、その内容に基づいて、預貯金や有価証券、自動車などを取得する相続人への名義変更手続を行いますが、行政書士は、金融機関所定の相続届の作成、預貯金口座の解約・払戻し、有価証券の移管、自動車の名義変更などについて、相続人から委任を受けて手続を進めることができます

これらの手続に必要となる書類や書式は金融機関などによって異なりますが、行政書士へ依頼すれば、各窓口への確認や必要書類の準備を任せられるほか、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から財産の名義変更まで、一連の相続手続をまとめて進めることができます。

行政書士に依頼できない相続手続

行政書士は相続に関する多くの手続を扱えますが、すべてを単独で行えるわけではありません。

不動産の相続登記

相続した土地や建物の名義を変更する相続登記は、司法書士の業務です。

(業務)
第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 登記又は供託に関する手続について代理すること。

したがって、行政書士が相続人調査や遺産分割協議書の作成を担当した場合でも、法務局へ提出する相続登記の申請は司法書士へ引き継ぎます

不動産の相続登記申請は司法書士の業務です。
行政書士香川法務事務所では、相続登記が必要な場合には司法書士と連携して手続を進めます。

(参考:司法書士法-e-Gov法令検索

相続税の申告・税務相談

相続税の申告書作成、税額の具体的な計算、税務署への申告代理、個別の税務相談は税理士の業務です。

(税理士の業務)
第二条 税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第十条の四第二項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。第四十九条の二第二項第十一号を除き、以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。

この規定により、税務代理、税務書類の作成、税務相談は税理士の業務となるため、行政書士が相続税申告の要否を個別に判断したり、具体的な税額を計算したりすることはできません。

相続税申告の要否や具体的な税額については、必ず税理士または税務署へご相談ください。
行政書士香川法務事務所では、相続税申告が必要な場合には相続税に詳しい税理士と連携して対応します。

(参考:税理士法-e-Gov法令検索

相続人同士の交渉や紛争対応

相続人同士で遺産の分け方をめぐって対立している場合、特定の相続人の代理人として交渉できるのは、原則として弁護士です。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

このため、行政書士は、相続人全員ですでに合意している内容を遺産分割協議書にすることはできますが、一方の希望を相手へ伝えて条件を交渉することはできません

遺産の分け方、預貯金の使い込み、遺留分などをめぐり相続人間で争いが生じている場合には、弁護士へご相談ください。

(参考:弁護士法-e-Gov法令検索

家庭裁判所へ提出する書類の作成

相続放棄、限定承認、遺産分割調停、特別代理人の選任、不在者財産管理人の選任などを申し立てる場合には、家庭裁判所へ提出する書類を作成しなければならず、その作成は弁護士または司法書士へ依頼します。

行政書士は、各制度の一般的な説明や申立てに必要となる戸籍の収集などは行えますが、家庭裁判所へ提出する申立書を依頼者に代わって作成することはできません

相続手続を依頼できる専門家の違い

各専門家が担当する主な業務をまとめると、次のようになります。

専門家依頼できる主な業務相談に向いているケース
行政書士戸籍収集、相続人・財産調査、相続関係説明図、財産目録、遺産分割協議書、預貯金・有価証券・自動車の手続争いがなく、書類収集から財産の名義変更までまとめて任せたい
司法書士不動産の相続登記、裁判所提出書類の作成など相続財産に土地や建物が含まれている
税理士相続税の試算、税務相談、相続税申告遺産額が基礎控除を超える可能性がある
弁護士相続人との交渉、遺産分割調停・審判、遺留分請求、使い込みへの対応相続人同士で対立している、または紛争が予想される

相続手続は、その内容によって依頼すべき専門家が異なりますが、相続人同士に争いがなく、戸籍収集、相続人・相続財産調査、遺産分割協議書の作成、預貯金の解約・払戻しなどをまとめて任せたい場合には、まず行政書士へ相談するとよいでしょう

なお、不動産の相続登記は司法書士、相続税の申告や税務相談は税理士、相続人同士の交渉や紛争への対応は弁護士へ相談するのが基本です。

ただし、相続財産に不動産が含まれている場合や相続税申告が必要な場合でも、司法書士や税理士と連携している行政書士事務所であれば、相続の内容に応じて各専門家へ引き継ぎながら窓口を一本化して手続を進めることが可能です

士業の職印

行政書士へ相続手続を依頼するメリット

戸籍収集から財産の名義変更までまとめて任せられる

相続手続は、相続人調査、相続財産調査、遺産分割協議書の作成、財産の名義変更という順序で進める必要がありますが、これらを行政書士へまとめて依頼すれば、相続人調査で収集した戸籍や財産調査で取得した証明書を、その後の遺産分割協議書の作成や名義変更にも利用できるため、必要書類の不足を防ぎながら一連の手続を進めることができます。

平日に役所や金融機関へ出向く負担を減らせる

戸籍の請求先となる市区町村や被相続人が口座を保有していた金融機関が複数ある場合には、それぞれの窓口へ必要書類や手続方法を確認しなければならないため、多くの時間と手間がかかります。

また、郵送で請求できる書類についても、申請書の作成、定額小為替の購入、本人確認書類の準備、返送用封筒の用意などが必要となり、書類に不備があれば再提出を求められるため、仕事や育児などで平日に時間を確保しにくい方にとって、役所や金融機関とのやり取りを行政書士へ任せられることは大きなメリットです。

司法書士や税理士との連携を任せられる

相続財産に不動産が含まれ、相続税申告も必要となる場合には、行政書士だけでなく司法書士や税理士も関わることになりますが、連携体制のある行政書士事務所へ依頼すれば、相続人調査や遺産分割協議書の作成は行政書士、不動産の相続登記は司法書士、相続税申告は税理士というように、手続の内容に応じて必要な専門家へ引き継いでもらうことができます。

行政書士へ相続手続を依頼した場合の流れ

  1. 初回相談で家族関係と相続財産の概要を確認する
  2. 依頼する業務の範囲と見積額を確認する
  3. 委任契約を締結する
  4. 戸籍を収集して法定相続人を確定する
  5. 預貯金、不動産、有価証券、負債などを調査する
  6. 相続人全員で遺産分割協議を行う
  7. 合意内容に基づいて遺産分割協議書を作成する
  8. 預貯金などの解約・払戻しや名義変更を行う
  9. 必要に応じて司法書士や税理士へ引き継ぐ

ただし、上記は一般的な流れであり、相続人の人数、戸籍の範囲、財産の種類、金融機関の数などによって、必要な手続や完了までの期間は異なります。

行政書士香川法務事務所へ依頼する場合の費用

行政書士香川法務事務所の主な相続手続の報酬額は、次のとおりです。

サービス内容報酬額(税込)
遺言書存在確認11,000円
相続人調査(相続関係説明図作成)44,000円(相続人3人まで。4人目以降は、1人につき5,500円を加算。)(被相続人の孫が代襲相続人となる場合は1割、兄弟姉妹が相続人となる場合は2割、甥姪が代襲相続人となる場合は3割、それぞれ加算。)
法定相続情報一覧図作成11,000円
相続財産調査(財産目録作成)44,000円(調査対象3項目まで。4項目目以降は、1項目につき5,500円を加算。)
相続放棄司法書士と連携して別途お見積りを作成します。
遺産分割協議書作成55,000円〜
銀行口座名義変更27,500円×金融機関の数
不動産名義変更司法書士と連携して別途お見積りを作成します。
有価証券名義変更27,500円×金融機関の数
自動車名義変更27,500円~
相続税申告税理士と連携して別途お見積りを作成します。
※上記報酬額とは別に役所や金融機関に支払う手数料などの実費がかかります。

行政書士への相続手続依頼に関するよくある質問

何を依頼すればよいのか分からなくても相談できますか?

もちろん相談できます。
家族関係、遺言書の有無、相続財産の内容、これまでに行った手続などを確認したうえで、今後必要となる手続をご案内します。

戸籍収集だけを依頼することもできますか?

戸籍収集と相続関係説明図の作成だけを依頼し、その後の遺産分割協議や金融機関の手続をご自身で進めることも可能です。

相続人の一人と連絡が取れない場合も依頼できますか?

戸籍や戸籍の附票などによる住所調査、相続が発生したことを知らせる書面の作成・送付などは、行政書士へ相談できます。

ただし、行政書士が対応できるのは住所調査や通知書の作成などまでであり、連絡が取れた相続人が遺産分割を拒否している場合や、分割条件をめぐって交渉が必要な場合には、弁護士へ相談する必要があります。

相続登記や相続税申告もまとめて相談できますか?

行政書士が相続登記や相続税申告を行うことはできませんが、司法書士や税理士と連携している事務所であれば、必要な専門家へ引き継ぐことができます。

行政書士香川法務事務所でも、不動産の相続登記は司法書士、相続税申告は税理士と連携し、必要な専門家へ引き継ぎながら対応しています。

遠方に住んでいても依頼できますか?

遠方にお住まいの場合でも、オンライン面談や郵送を利用して依頼できるほか、相続人が全国各地に住んでいる場合にも、戸籍収集や遺産分割協議書への署名・押印を郵送で進めることが可能です。

荒川区の相続・遺言は【相続・遺言専門】行政書士香川法務事務所へ

相続手続では、戸籍の収集、相続人・相続財産の調査、遺産分割協議書の作成、預貯金の解約・払戻しなど、数多くの手続が必要となりますが、行政書士香川法務事務所では、戸籍や証明書の収集から各種書類の作成、預貯金の相続手続まで、行政書士が一貫して対応します。

さらに、不動産の相続登記が必要な場合には司法書士、相続税申告が必要な場合には税理士と連携し、複数の専門家が関わる相続についても、相談窓口を一本化して手続を進めることができます。

荒川区で相続人・相続財産の調査、遺産分割協議書の作成、預貯金の解約・払戻しなどの相続手続にお困りの方は、お気軽に【相続・遺言専門】行政書士香川法務事務所までお問い合わせください。

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この記事の執筆者

香川 貴俊
香川 貴俊行政書士香川法務事務所 代表
行政書士(東京都行政書士会荒川支部理事、荒川区役所区民相談員)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ビリヤードプロ